英国の教育制度に基づく私立校ラグビースクール・ジャパン(RSJ)が来秋、千葉県柏市に開校する。英国式の学校がなぜ日本で開校することになったのだろうか。海外進学を希望する生徒らにとって、新たな選択肢となるのだろうか。事情を探ってみた。
義務教育終えた高校生から受け入れ
千葉県にできるRSJの本校は、英国イングランド中部にあるラグビー校。日本の中2から高3に当たる5年間、全寮制(一部生徒は自宅通学)で学ぶ共学のパブリックスクール(私立名門校)だ。

創立は、日本でいえば室町時代の1567年にさかのぼる。校舎が映画「ハリー・ポッター」の撮影に使われたことでも有名だ。スポーツのラグビーは、ここの生徒が校庭でフットボールの球を抱えて走ったことが始まりだといわれている。

2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)のレガシー(遺産)として、本校が開校を日本側に打診した。英国の学年7~13(開始時に11~17歳)のうち、最初の年度は一部学年を除く5学年の生徒計160人を募集する。
ただ、RSJはインターナショナルスクールの扱いなので、日本国籍の子どもが就学しても義務教育を履行したことにはならない。そのため、日本人の生徒は義務教育を終えた高校以上の学年で主に受け入れる方針だ。
英国式の全寮制学校を日本でつくるのは、英企業で働き、日本に駐在する社員の子女らに向けて英国式の教育機関がほしいという要望があったためだ。米国の麻薬や銃犯罪、ヘイトクライム(差別などからくる嫌がらせや犯罪)などを心配して、英語で学ぶなら英国の教育を、という海外の生徒や親の関心が高まっていることも背景にある。
ただ、学費は本国並みでかなり高いものになる。自宅通学で学年により年間450万~550万円。寮生の学費は、さらに高くなる見通しだ。学業、スポーツ、音楽などに秀でた生徒への特待生制度や経済的に困難な生徒への奨学金制度も検討するといっている。
海外有名大進学に有利とは限らない
岩手県八幡平市にも今年、英国式の学校「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」が開校した。全寮制のハロウに対し、首都圏にできるRSJは自宅通学のほか、寮生活は週末帰宅も選択できる。10代を寮生活でともに過ごすことで卒業後の結びつきも強くなるといわれている。
英国のオックスフォード大とケンブリッジ大(「オックスブリッジ」と併称)は世界の大学ランキングで米国の大学とトップを争っている。こうした有名大学を目指す人にとって、英国式の学校で学ぶことは有利に働くのだろうか。
RSJのカリキュラムは、Aレベルという英国式のものだ。大学での専攻に合わせて3科目選び、専門的な内容を学ぶ。英国の大学入試はAレベルの全国共通テストの成績や小論文、課外活動の成果などで決まる。だからといって必ずしも進学に有利だとは限らないとの見方もある。
英国では近年、恵まれた教育環境を持つ私立名門校への風当たりが強くなっている。大学入試でも、多様な社会階層の生徒が集まる公立校で、課題解決型の社会貢献に取り組むことが課外活動として評価される時代になっている。オックスブリッジへの入学者にも公立校の出身者が増えている。最近では、日本でも公立校から欧米の有名大学に進む例も出ている。
■解説者 石合力 朝日新聞大阪本社編集委員
(朝日中高生新聞2022年12月25日号)

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