
人権と自由を求め闘う姿から考えて
今年のノーベル平和賞の授賞式が日本時間の10日夜にノルウェーの首都オスロで開かれ、イランの人権活動家ナルゲス・モハンマディさん(51)に贈られます。専門家は今回の授賞を「彼女を取り巻く環境を知り、どうすれば人々が幸せになれるのかを考えるきっかけにしてほしい」と話します。(正木皓二郎)
モハンマディさんは女性の権利拡大や死刑の廃止などを求めてきました。「イランにおける女性の抑圧と闘い、すべての人の人権と自由を促進した」として、授与されます。その活動がイラン政府に反体制的とみなされ、刑務所に収監されたままです。
イランはイスラム教の教えを重んじる国です。昨年9月、公共の場で髪の毛を隠すために女性に着用が義務づけられる布「ヒジャブ(ヘジャブ)」をめぐり混乱が起きました。
当時22歳の女性がヒジャブのかぶり方が不適切だったとして逮捕され、その直後に亡くなったのです。警察官の暴力を疑う声や、「女性への抑圧だ」などと反発の声が上がり、政権への抗議デモは世界に広がりました。モハンマディさんも獄中から政府を非難するSNS投稿を続けてきたといいます。
イスラム文化に詳しい東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教の後藤絵美さんは、こうした抗議活動は、イスラム教の名の下にできた制度や社会状況に向けられているとみています。「イスラム教にも、いろいろな考え方があります。自由や人権を大切にするムスリム(イスラム教徒)もたくさんいます」
イスラム教徒は世界に約20億人、日本にも推計で20万人以上いるとされています。後藤さんがイスラム教徒の友人から受けるのは「神様が生活の中に自然と入っている印象。イスラム教はどんなときも心のよりどころのようです」といいます。神様の名前や教えが会話に出てくることも多く、存在の身近さを感じるそうです。
中高生には、「政権を非難することで終わるのではなく、彼女を取り巻く環境や、同じように闘う人たちのことを知って、どうすれば人々が幸せになれるのか、考える機会にしてほしい」と話しました。
(朝日中高生新聞2023年12月10日号)