
子どものころから西洋文化に憧れて、20カ国以上も海外旅行をしたという鏡味味千代さん。今は「外国よりも、日本がおもしろい!」と、着物姿で舞台に立ち、日本に古くから伝わる太神楽を受け継いでいます。(田村民子・伝統芸能の道具ラボ)
Q 「太神楽」は初めて聞く言葉かもしれません。どんな芸能ですか。
A お正月に、赤い顔の獅子舞を見たことがあると思います。獅子舞を見ると、おめでたい気分になりますよね。太神楽もその仲間で、見ているみんなにいいことがありますように、という願いを込めて、獅子舞や傘回しなどの曲芸をして福を呼び込みます。
Q 「傘回し」はテレビなどでも見ることがありますね。

A 竹と布でできた和傘を使います。傘は横から見ると、下に広がる形をしていますよね。漢字の「八」もそうですが、昔の人は、そういう形を「末広がり」と呼んで、縁起がいいものだと考えたんです。
私も「みんなの夢や未来が大きく広がりますように」と願いながら、傘の上に、鞠などいろいろな物をのせてクルクルと回します。
Q 子どものころから伝統芸能に興味があったのですか。
A 小さいころはヨーロッパに憧れていて、高校生のときには、フランスに1年間留学しました。とても楽しく過ごしましたが、そのとき、気付いたことがあるんです。日本の文化ってとても豊かなのに、あまり知られていないし、説明しようとしても私自身よくわかっていないなぁと。それで、大人になったら、外国の人に日本のいいところを伝える仕事がしたいと思うようになりました。
Q いろいろなお仕事があるなかで、太神楽をやろうと思った理由は?
A 初めて太神楽を見たとき、日本のハッピーが詰まった、すてきな芸能だなって思ったんです。これを自分でやれば、夢がかなうなって。

太神楽の修業では、三味線や日本舞踊も習うのですが、自分の国にこんなに面白い文化がいっぱいあることに、びっくりしました。
外国の人にも知ってもらいたいので、英語での公演もしています。
おすすめ! 日本文化、英語で話してみよう
みなさんは気付いていないかもしれませんが、実は日本には身近なところに「おめでたいアイテム」があふれているんです。紅白のおまんじゅうや、松の模様。そういう小さなハッピーも立派な日本文化です。それを英語で説明する練習をしておくのもいいかもしれません。
【太神楽】
獅子舞や、傘の上で物を回す曲芸などを披露するおめでたい伝統芸能。寄席やイベントなどで見られる。もともとは神社の信仰と結びついた芸能で、江戸時代に成立した。ばちやナイフをジャグリングのように投げる曲芸や、バランスをとりながら物をのせていく曲芸などがある。
鏡味味千代(かがみ・みちよ)

太神楽師。1976年生まれ、山梨県出身。国際基督教大学教養学部卒業。広報代理店で働いた後、国立劇場太神楽研修を修了。英語でおしゃべりする太神楽も行っており、ロンドン、カナダ、タイなど海外でも公演を行う。
出演情報はHPで。 https://kagamimichiyo.jp
(朝日中高生新聞2022年1月16日号)

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