和室の改修作業をする学生ら=5月 武庫川女子大学提供

テーマは「女性によるDIY」

昭和の半ばに建てられた木造2階建て。この時代のごく一般的な住宅ですが、れっきとした大学の施設で、「暮らしのラボ」と名づけられています。

家の中に入ると、天井がなくて屋根裏や電気の配線が見える所や、床が外され土台まで見える所があります。

生活環境学科の学生らが、家の構造を実際に見ながら、住宅の設計やインテリアなどを学べるようにしています。

住宅街の一角にある「暮らしのラボ」の外観=8月、兵庫県西宮市 ©朝日新聞社
床の一部を開けて構造が分かるようになっています=8月、兵庫県西宮市 ©朝日新聞社

50年以上前に建てられた家なので、マンションや新しい一軒家で育った若い学生たちには、見慣れないものもあるようです。

土間からの段差が高い玄関、床まである木製の掃き出し窓、窓の外にある雨戸に戸袋……。「そういうのを知ってもらうのも、この家の目的の一つです」と、生活環境学科の山田由美准教授は言います。

大学が業者に依頼して耐震補強などをした後、今年4月から学生約10人が、暗い印象の和室を明るく洋風にするなど、改修に取り組みました。コンセプトは「女性がホームセンターで買える道具や建材でするDIY」です。

現場での実務に達成感、自信に

改修作業の中心になった大学院生の前田果歩さんと、前田さんがデザインした和室の照明=9月、兵庫県西宮市 ©朝日新聞社

中心になったのは、大学院生の前田果歩さん。1級建築士をめざす前田さんにとっては、工事のプランを練り、図面を描き作業者に指示をする過程は、資格取得に必要な「実務経験」の一部でもあります。

もともとインテリアや住宅に興味があったという前田さん。和室に並ぶ照明器具も、北村薫子教授の指導で、前田さんがデザインしたものです。

ただ、本格的な改修作業は初めて。土壁の上から珪藻土を塗る作業が特に楽しかったそうです。

壁に板をはる作業など力仕事では「やっぱり力が必要だということを理解しました」。後輩たちに作業を的確に指示する難しさも感じたそうです。

一方、女性だけでやったという達成感もあります。「建築現場では、男子が中心になりがちだけど、そこは女子大ならでは。女の子がリーダーシップを発揮し、それぞれの持ち場でがんばっている姿を間近で見られたのも良かった」

自信がついた前田さんはその後、友人から自宅の部屋の改装を頼まれ、喜んで引き受けたそうです。

まだまだ改造の余地

大学によると、改修はいったん終わりましたが、床の張り替えや収納棚を作るなど、まだ手を加える余地はたくさんあるといいます。ふすまの色を変えてみたり、壁を別の素材で塗り直したりして、雰囲気の変化を試すのも面白そうです。

古いエアコンと新しいものとの冷暖房効率の比較や、照明やカーテンの効果の検証といった、快適な住環境に関する勉強にも活用する予定です。

生活環境学科は、卒業後に住宅メーカーやリノベーションを手がける工務店などに就職する学生も多いそうです。山田准教授は「ここで学んだ学生が、これから各地で空き家の活用などにも携わってくれれば」と願っています。

(朝日中高生新聞2024年10月13日号)