
「知識の基礎に」 思い込め解説
難しいニュースをわかりやすく解説し、子どもだけでなく、大人からも支持を受けてきた、まさに「国民の先生」。「わかりやすさ」について考えたのは、NHKに入って17年目の1989年。記者からキャスターになった時だったと、自身の記者人生を記した著書で振り返る。キャスターに転身して6年目の1994年から、子ども向けのニュース番組「週刊こどもニュース」のお父さん役に。11年間、わかりやすさを追求して番組作りに力を注いだ。
子どもの頃から大の読書好き。「食事だよ、と言っても本に夢中になって全然来なかったので、親から『本ばっかり読むのやめなさい』と怒られた」というほど。記者の仕事を志したのも、小学6年生の時に地方で働く記者の奮闘を描いた本と出会ったことがきっかけだ。
NHKに入って最初に配属されたのは、島根県の松江放送局。地方記者への憧れと、大学時代に島根県と鳥取県だけ旅行に行けなかったことから「西の方の小さな放送局に行きたい」と希望し、それがかなった形だ。松江で3年過ごした後、広島放送局呉通信部へ。実は、呉市の被爆者数は広島市、長崎市に次いで3番目だ。広島市のキノコ雲を見た呉市の人が、被爆地に救援に駆けつけたからだという。そのことを知り、呉では被爆2世の取材に力を入れた。その後、東京で事件や事故、災害など幅広い分野で取材を経験した。
デマやフェイク情報がはびこる時代。一人ひとりが正確な知識を持ち、判断することによって、健全な民主主義社会が成り立つとの思いから、そのための材料を提供するのが自分の仕事だと語る。「私は基礎の基礎を伝えている。もうちょっと知りたいなと思ったら、新聞や本を読むということをしてほしい。そういう願いを込めてテレビで解説をしているのです」(大井朝加)

池上彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。慶応義塾大学卒業。NHK記者、キャスターを経てフリーに。著書『総決算 ―ジャーナリストの50年―』(早川書房)が発売中。
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(朝日中高生新聞2024年9月29日号)
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