
空想の世界へ
もしも空を飛べたら? もしも魔法が使えたら……? 現実にはありえないことを、頭の中であれこれと思いめぐらす「空想」。その力は、科学技術や文化の進歩に役立ってきました。この秋、みなさんも空想のとびらを開けてみませんか?
空想街雑貨店 西村典子さん・祐紀さん
空飛ぶ魚やチョコミント… 姉妹で「形」に

書きためたメモ ヒントに
表紙の絵を手がけた西村典子さんは、雑貨ブランド「空想街雑貨店」の店長です。空を飛ぶ魚の街をはじめ、人々に忘れられた物語たちが最後にたどり着く王国や、すべてチョコミントでできている街など、「こんな世界があったらいいな」と思いをめぐらせ、描いた空想の街は80以上。「描くのはもちろん、考えるのが楽しくて仕方がありません」と笑顔を見せます。
典子さんが子どもの頃から書きためたメモや、街を歩きながら見聞きしたものなどが空想の街をつくるヒントに。1作品につき完成までに3週間ほどかかります。「構図や、どの色を使うかなどを考えるのは大変ですが、頭の中にあった街が形になっていくのがうれしいんです」

文房具や図鑑も
東京・吉祥寺にあるお店には、典子さんの絵や、その絵をデザインした文房具やポーチなどの雑貨が並びます。
典子さんが生み出す世界を、雑貨や店舗づくりを通じて広めてきたのは、妹でデザイナーの祐紀さん。絵をまとめた「空想街図鑑」もその一つで、空想の街に旅行した気分になるよう、その街の物語や見どころを紹介するページも盛りこみました。「何が描いてあるのかじっくり見てもらえたらうれしいよね」と典子さんと顔を見合わせます。
空想に救われた子ども時代
子どもの頃は、4人以上の前では話せなくなるほど、おとなしかったという典子さん。自分の気持ちをうまく表現することができない中、「自由に空想できる時間は楽しく、救われていました」。
転機は、美術を学んでいた大学4年生のとき。ネットで自分の絵を売ってみると、空想の街を描いた作品が一番反響がありました。自分の頭の中だけにあった世界が、絵を見た人の中でさらに考えがふくらむ――。空想の連鎖が広がっていくことにも魅力を感じたといいます。
2016年に祐紀さんと「空想街雑貨店」を立ち上げ、22年には吉祥寺にお店をオープン。今年4月には、このお店のとなりに、空想街の世界にひたれるカフェもオープンさせました。

空想街を旅するゲームや、空想街のテーマパークのような美術館をつくりたいなど、「やりたいことがつきないよね」と祐紀さん。日々ふくらみつづける2人の空想は、これからも見る人の心をひきつけていくに違いありません。
(朝日中高生新聞2024年11月10日号)
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