習得すれば努力で高められる

 歴史の年号や数学の公式、英単語……。「おぼえ方がわからない」「すぐに忘れてしまう」など、暗記を苦手にしている人がいるかもしれません。記憶力を競う「メモリースポーツ」の日本チャンピオンに輝いたことがあり、記憶術を学ぶスクール「メモアカclass」の運営などをするメモアカ代表の青木健さんに記憶術のコツを聞きました。(正木皓二郎)

point

1 語呂に合う話作り
2 関連づけも効果的
3 復習の徹底で定着

正しい方法で力をアップ

「記憶力は才能ではなく、努力によって高められる技能」――。青木さんはこう力説します。記憶力は語学の力と同じように環境による影響を受けるといい、「正しい方法を身につければ伸ばすことができる」と説明します。

具体的にどのような方法があるのでしょうか。青木さんは大きく二つを挙げます。「成し遂げる、達成する」といった意味があるachieve(アチーブ)という英単語をおぼえる場合を例にしてみましょう。

一つは「ストーリー法」と呼ばれる方法で、一般的には語呂合わせと重なります。青木さんは「ものすごく暑い(アチー)夏のクリスマスイブ(ブ)をイメージして」。夏の時期にクリスマスイブをむかえるサンタクロースが何かを達成しているようすを思い浮かべることで、頭に残りやすくなる効果が期待できるそうです。

もう一つが「似たような意味の単語と関連づけておぼえる」ことです。achieveの類義語には「完了する」という意味のcompleteや「完成させる」をあらわすaccomplishなどがあります。こうした単語をひとまとめにしておくと、連想ゲームのように記憶のなかから引き出すことができ、おぼえやすくなるといいます。

イラスト・柴田純与

アウトプットも大事に

さまざまな知識を蓄えると、蓄えた分だけ、記憶するときに関連づけられる材料が増えます。知らないことをインプットする(おぼえる)のが重要なのはそのためですが、青木さんは「それ以上にアウトプットする(思い出す)ことを重視してほしい」と考えます。「実際の試験では知識事項を引き出せるかどうかがポイントになる。教科書などを読むだけではなく、手を動かして問題を解くことが大切」

学んだり、身につけたりした(はずの)内容を定着させるには復習することも欠かせません。「一度おぼえたとしても、つぎの日には7、8割はぬけてしまう」と青木さん。身についていない事項を明確にしたうえで、24時間以内の復習と3日後の復習、1週間後の復習をすすめます。

青木さんはもともと暗記が苦手で、大学を受験するときに苦労しました。大学に入学したあと、シャッフルしたトランプの並び順をはじめ、自分自身が記憶できる力を競う「メモリースポーツ」と出あい、記憶術を習得。選手として日本だけでなく、世界で活躍しました。「一度にすべてをおぼえる必要はない。まずは興味のある分野や単元からはじめることで、苦手なところにも取りかかりやすくなるのでは」とアドバイスします。

(朝日中高生新聞2024年11月17日号)