
幸せは心持ち次第 小さなことでも
「自分を見て、元気になってくれる人がいれば」。そんな思いで俳優の仕事をしてきた。宝塚歌劇団を退団したのは1995年。2000年代からは主にテレビドラマの主演で役柄を広げ、第一線を走り続けている。
新たに挑戦したのは、ベストセラーの児童書「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズの実写映画だ。物語の舞台となる駄菓子屋の店主、紅子を演じた。「え、私でいいんですか?」。役の依頼があった時に真っ先に思ったことだ。原作では、ふくよかで「まるですもうとりのような」紅子。すらっとした自身のスタイルからはかけ離れている。「特殊メイクをはじめ、たくさんの工夫が必要になるでしょう」。特殊メイクの影響で顔の表情筋が制限される中、「自分が思うよりも大げさに表情を変え、目線や目の表情で補う。それを、一つひとつ学んでいきました」。新鮮で、おもしろい経験だったという。

紅子は、自分の現状をよくして幸せになりたいとやってくる客に、それをかなえる不思議な駄菓子を売る。ただし、客がルールを破って利用すると不幸を招く。「幸せになるか不幸になるかは自分次第。自分が主体だという作品のメッセージは身にしみます」。今、自身は幸せかといわれると「手元にあるカードでどう満たされるかは、心持ち次第」と笑う。「天気がよかった、朝ごはんがおいしかった。日々はそんな小さな幸せにあふれている。それを幸せだと感じることが、大事だと思うんです」
役を演じることに喜びを感じるが、肝に銘じていることがある。「選んでいただいて終わりではない」ということ。「やってよかったと思えるのは、結果が出てから。たくさんの人に喜んでもらえたと実感できた時です。自分の仕事に満足するのは、そこまでお預けにしたい」。携わった作品を見た誰かを、少し幸せにできたら。これからも、そう願って芝居を届けていく。(中塚慧)

天海祐希(あまみ・ゆうき)
1967年生まれ、東京都出身。主演映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」は12月13日に公開。12月から来年1月にかけ、主演舞台「桜の園」が東京、大阪、福岡で上演される。
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(朝日中高生新聞2024年11月24日号)

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