
10代の心を繊細に描く、小説家・汐見夏衛さんによるお悩み相談のコーナーです。友達、学校、家族、将来のこと…。誰にもいえない悩みや、ちいさなモヤモヤにお答えします! 学校生活を送る中で、友達の存在とは…? 無理にでも友達を作るべき…? 汐見さんにとって友達とは…。
相談
自分はとある出来事から新しい友人なんて要らないと思う人間になりました。そのとある出来事は高校に入った途端中学からの友人に見捨てられコソコソと陰口を言われるようになったことです。あんな仲良かったのに、何もしてないのに急に裏切られてから、僕は新しい友人を作ろうと、誰かと仲良くなろうと思わなくなりました。そのせいでまた陰口が加速し、とても居心地が悪くなりました。故意的に友人を作らない僕を憐れむような声が聞こえてきて「またか…」と思う日々です。解決しようとは思わないですが誰かに相談したいと思っていたので、送らせて頂きます。自分はこのままでいいですか?無理に友人を作らなくてもいいでしょうか。よろしければこんな僕に助言などを頂けましたら幸いです。
(しうくさん 静岡県 高校2年生 17歳)
汐見さんの本はあたかも自分を描いたような内容で、涙なしには読めません。すごく感動して今は汐見さんの本を全部買いました! 相談内容なのですが、汐見先生にとって友達ってどう言った存在ですか? 私は友達が何かがあまりよくわかりません。生きづらさを感じ、友達とはどんな存在なのかわからないんです。汐見先生にとっての友達はどんな存在なのか教えていただきたいです。
(天音さん 北海道 中学1年生)
汐見夏衛さんの回答
しうくさん、天音さん、ご投稿ありがとうございます。
似た内容の回答になりそうだと感じたので、勝手ながら一緒にお返事させてくださいね。
まず、しうくさん。
つらい思いをされましたね。仲の良かった人から裏切られるというのは、人生の中でも1、2を争うくらい傷つく出来事だと思います。どうか少しでも傷が癒えますように。
さて、
『自分はこのままでいいですか?無理に友人を作らなくてもいいでしょうか。』とのことですが、私の答えは「そのままでいいです、まったく問題ありません、無理に作る必要などありません!」です。
そして、天音さん。
拙作を全部お手にとってくださったとのこと、誠にありがとうございます。読んでくださった方に共感してもらえるようなお話を目指して書いているので、天音さんのお言葉とても嬉しいです。
さて、
『友達とはどんな存在か』とのことですが、個人的な見解としては、「友達=いたらそれはもう素敵なことだけれど、別にいなくても何の問題もない存在」という気がしています。
実際、今の私には、しょっちゅう会って遊んだりお食事をしたりするような仲の友人というのはおりません。
高校生のときに引っ越して地元を離れ、大学卒業を機に県外に出て、就職を機に縁もゆかりもない土地に引っ越し、そのままそこで暮らしていますので、つまり今生活している周辺には親族も子どものころからの知り合いもまったくおらず、友達と呼べるような人は近くにはいないわけです。
そもそも私は元から友達が多いほうではなかったし、インドア派で休日は誰かと遊ぶより家でひとりでだらだら過ごすことが多かったので、特に現在の状況が寂しいとも感じていません。
今は、家族以外で会うのは子どもの学校関係の方や近所の方くらい。そこで挨拶や天気の話など当たり障りのない、いわゆる「表面的なお付き合い」をしている程度です。
定期的に連絡をとったりお会いしているのは、仕事関係の方だけですね。
地元で仲良くしていてくれた友達や、以前の職場でよくしていただいた方など、都合がつけば会って話したいと思う人はいますがほんの数人ですし、社会人になるとたいてい仕事や家庭の都合でスケジュールが合わないので、もう何年も会えていません。年賀状で年に一回やりとりするだけです。
我ながら淡白な友人付き合いをしているなあと思いますが、何年も会えていなくてもつながれている人は、おそらく一生の関係になるので、その数人だけは大切にしていこうと思っています。
不思議なもので、大人になると、誰が誰の友達かとか、誰に友達がいるかとか、まったく話題になりません。
たとえば仕事関係の人とプライベートな話(趣味だとか家族構成だとか)をしないわけではないのですが(もちろん全くしない人もいますが)、友達の有無だったり、最近いつ友達と会って何をしたか等、お互いに全然知りませんし、わざわざ訊いたりもしません。
もちろん、人付き合いが好きで、友達同士で買い物や旅行に行ったり、家族ぐるみでキャンプやバーベキューをしたりする大人も沢山いるでしょうが、私の周囲ではまったくそんなことはないです。
人それぞれ、というやつです。
ちなみに大学もわりとそういう雰囲気でした。ひとりで行動する人も多い(友達と同じ授業をとっているとは限らないので、友達が多い人でも単独行動をするタイミングが出てくる)し、アルバイトやサークルでの交遊関係は同学部生からは見えないので、その人が誰と親しいかなど全く分からない。でもそんなものなのでお互い相手の友達関係など気にしない感じです。
中高生のころはそうではなかった。誰と誰が友達同士で、どんな話をしているかとか、いつどこへ遊びに行ったとか、そういう情報は得ようとしなくても自然と入ってくるものでした。そうなるとやはり他人の交遊関係が気になってしまい、友達がいないというのは少しイレギュラーに感じてしまうかもしれません。
でも、しうくさんや天音さんがそのような環境で過ごすのは、あと数年でしょう。
勉強だったり部活だったり趣味だったり、好きな動画視聴や音楽鑑賞だったり、そういうものに夢中になっているうちに、気づけば終わっていると思います。
自分が今大事にしたいものだけ大事にしていればいいのです。
ちなみに私の中学・高校時代の記憶を今思い返してみると、ぎゅっとまとめれば数日分、くらいしか覚えておりません。
私の記憶力が貧相なせいもありますが、ほとんどの大人にとって学生時代の思い出は数ヶ月分くらいに凝縮されているんじゃないかなあと思います。長い人生の中の数年なんて、そんなものです。
なので、今、学校生活において色々と思うところがあったとしても、そこまで気に病むことはないと思うのです。
「嫌だな、悲しいな、つらいな」と感じることがあったとき、「…でもまあ、十年後にはこの気持ちも悩みもほとんど覚えていないんだろうな」と、少し自分を上から見つめてみてください。
ちょっと気が楽になりませんか?
最後にひとつだけ。
繰り返しになりますが、私は友達が少ないですけど、それでも親しくしてくれている数人は、一生大事にしたいと思っています。
もしその人たちが何か困っていたら駆けつけて助けたいし、その人たちも私が困って相談したら助けてくれるんじゃないかなと思います。
そう思えるだけの信頼関係を、年月をかけて築き上げてきたわけです。
ですので、もし今、あまり友達付き合いを積極的にしていない中でも、やはりつながっている友達、大事にしたい友達がいるのでしたら、あるいはこれから先いつかそういう存在ができたら、ぜひその方だけは大事にしてください。
それと、積極的に友達を作らなきゃと思っていない中でも、この人と仲良くなりたいなと思うような人が現れたら、ぜひ声をかけてみてください。
そういう人たちは、たとえ私のように住む場所や環境が変わっていったとしても、いつも心の中に在って、何かあったら駆けつけたいと思えるような、大事な宝物になるはずです。
もちろん、誰もそんな存在がいなくて、これからもできなくても、何の問題もありません。
何のしがらみもなく、純粋に自分がやりたいと思えることだけに没頭できる、ノー友達ライフも楽しいものです。
しうくさん、天音さん、ほんの数年たまたま同じ場所で過ごすだけの人たちから、どんな目で見られようと、気にすることはありません。
どんな形であれ、たとえ他の人とは違う形であれ、あなた自身が自分の価値観で楽しく充実していると思える日々を送れることを祈っております。
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