記憶なくても命助ける活動できる

東京で衝撃受け決意

「1月17日に大学の友達同士でも、教授の口からも、『阪神・淡路大震災』という言葉すら出てこなかったのが、ショックだった」。米山さんは、活動を始めたきっかけについてこう語ります。

米山さんは高校まで、この震災の震源に近い兵庫県の淡路島で暮らしていました。毎年1月17日になるとテレビや新聞で、震災に関連した特集を目にし、学校では語り部の話を聞きました。そのため、進学した東京の大学で1月17日に誰も何も言わなかったことに衝撃を受けました。「二度と自分たちと同じように悲しくてつらい経験をしてほしくない」と活動する語り部の思いが伝わっていないと実感。「記憶がない自分は語り部にはなれないから、語り部のサポートができないか」と考えるようになりました。

その後、東京の会社に就職。ある時「私は誰かがいないと何もしないのか」と、行動に移していない自分を無責任だと感じ、自ら語り部になる決意をしました。2018年の夏ごろに、語り部である父の正幸さんにその思いを伝えると、「経験していなくても、語り部の活動はできる」と応援してくれました。

思いをもっと伝えたい/防災と減災を呼びかけ

ライブ配信で活動

米山さんは19年、ライブ配信サービスで活動を開始。最初は、正幸さんが話す内容を参考にしていました。次第に防災や、東日本大震災についてなどテーマを広げていきました。ライブ配信のいいところは「気軽に聞きに来てもらえるので、関心がない人にも伝えることができる」こと。コメント欄で、聞いている人同士が話し合い、新しい知識を教え合うこともあります。

「記憶がない人が話しても信ぴょう性がない」など、批判の声もあります。しかし「ちゃんと備えておこうと思った」などのコメントをもらい、だれかの命を助けるきっかけになると信じて活動を続けてきました。

昨年4月、米山さんは故郷の淡路島に戻ってきました。震災から30年を迎えるのを前に、これまでの活動により力を入れるためです。持ち歩きやすい防災グッズの開発や、活動を継続させていくための事務所の設立など、挑戦したいことがたくさんあります。「一人でも多くの命が助かってほしい」という揺るぎない思いでいます。

この特集は、小貫友里、大井朝加が担当しました。

(朝日中高生新聞2025年1月12日号)

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