「小腹すいた」はエネルギー切れ

「勉強の合間のおやつや間食を上手に取ることができれば、脳の機能を高め、勉強の質も高めることもできますよ」

矢澤一良さん

そう話すのは、健康維持や病気の予防に役立つ栄養素や食品を長年研究してきた、矢澤一良さん(76)です。脳の機能を支えるDHA(ドコサヘキサエン酸)研究の第一人者として知られ、現在、早稲田大学規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門の部門長を務めます。

矢澤さんは、勉強の質を高めるためには、脳の機能を高める栄養素を意識的に取ることが重要だ、といいます。

例えば、ブドウ糖は脳のエネルギーとして集中力や記憶力をアップさせるといいます。また、ポリフェノールやGABAは継続的に取ることで、ストレスへの抵抗力や免疫力の向上、睡眠の質の改善に役立つそう。

では、どんなタイミングで取るとよいのでしょう。矢澤さんが推奨するのは「小腹がすいたときや、すく前の時間」です。「小腹がすくのは『脳や体のエネルギーが枯渇しているよ』という体からのシグナル。放っておけば集中力が低下したり、疲れがひどくなったりし、勉強の質が下がってしまいます」

気分が上がるものを

勉強に集中すると、空腹を忘れることもあるでしょう。矢澤さんは「あらかじめ小腹がすくことを予想して、おなかに入れておき、机に長時間向かえるリズムをつくる。そんな『知的食生活』を意識してみてください」。食べ方では、「若いみなさんは代謝もいいし、活動量もあるので、1回最大200キロカロリーほどを目安にしてみては」とアドバイスします。

「勉強のお供」の選び方については、「必要な栄養素を意識するだけでなく、『おいしい!』と感じることが実は重要」といいます。ストレス緩和やリラックスの効果を生み出せるからです。そうした食べ物は「ムードフード」と呼ばれます。

「栄養価がよくてもおいしくなければムードフードと呼べません。おいしく感じられ、体にもいい、みなさんのそれぞれのムードフードを探してみて」

矢澤さん自身は、ポリフェノールが取れるナッツや、果汁100%のグミ、DHAを多く含むヨーグルトを取り寄せて、研究活動の「お供」としているそうです。

ココに注意!

朝昼晩3食が基本/だらだら食いや取り過ぎ禁物

勉強の合間のおやつや間食、どのような点に注意すればいいのでしょうか。矢澤さんは「前提として、朝昼夜の食事のリズムを崩さないことがまずは基本」と強調します。

とりわけ朝食が1日の体のスイッチを入れる働きがあるといい、「午前中を棒に振りたくなければ、何とか朝食を食べてください」。

その上で、必要な栄養やエネルギーが必ずしも3食だけで取れるわけではないため、おやつや間食で補うことを勧めます。

小腹を満たすことを「体に良くないのでは」「太ってしまうのでは」と心配する人もいるかもしれません。しかし、「おなかがすくのは生理現象で恥ずかしいことではありません。勉強の質を落とさないように栄養を取るのだ、と前向きに考えて」。

ただ、「小腹を満たすまで延々と何かを食べる『だらだら食い』は、食べ過ぎを招きやすいので注意してほしい」と矢澤さん。

また、甘いものを食べた後は虫歯のリスクも生じるので、歯みがきも欠かせないといいます。

エナジードリンクなどに多く含まれるカフェインにも注意が必要です。カフェインには依存性がある上、成長期の骨の発達に影響する場合もあり、「取り過ぎは禁物」。

眠気を感じたときには「仮眠も含めて寝た方が勉強の効率や体にもいいと思いますよ」と助言しています。

専門家のおすすめ8選

チョコレート

チョコレート イラスト・illustAC

免疫力を高めるとされるポリフェノールが豊富。ストレスの軽減などに役立つGABA入りの商品も。「継続的に取るのがよいですよ」と矢澤さん。

ラムネ菓子

ラムネ菓子 イラスト・illustAC

記憶力や集中力を上げる働きがあるとされているブドウ糖が多く含まれている。「勉強中にラムネ菓子を取るのは理にかなっています」

バナナ

イラスト・illustAC

集中力を上げるのに役立つブドウ糖が取れる。また、GABAが含まれているバナナは「継続して取ればストレス軽減や、睡眠の質の改善によいですよ」。

紅茶

紅茶 イラスト・illustAC

「コーヒーよりおすすめ」と矢澤さん。集中力アップに役立つカフェインに加え、「抵抗力などを高める特定のポリフェノールを多く含んでいます」。

グミ

グミ イラスト・illustAC

ガムと同じで、かむことで脳への血流をよくする効果がある。「ポリフェノール入りやコラーゲン入りなど、自分に合うものを選んでほしい」

ガム

ガム イラスト・illustAC

勉強中は酸素を多く消費し、集中力の低下を招きやすい。「ガムをかんであごを動かすことは、血流を改善し、脳への酸素の供給にもつながります」

干しいも

干しいも イラスト・illustAC

ビタミンB6やカリウムが「脳の働きをサポートしてくれる」と矢澤さん。食物繊維を多く含むため、「腸内環境を整え、便通にもよいです」。

DHA(ドコサヘキサエン酸)

DHA(ドコサヘキサエン酸) イラスト・illustAC

脳の健康に役立つとされるが、食事でしか取れない栄養素。「青魚に多く含まれますが、手軽に取るならDHA入りのヨーグルトなどもありますよ」

矢澤一良(やざわ・かずなが)

 1948年、東京都生まれ。72年に京都大学を卒業。民間企業の研究員などを経て、89年に東京大学で農学博士号を取得。現・東京海洋大学大学院の客員教授などを歴任し、2019年から現職。

(朝日中高生新聞2025年1月26日号)

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