作者・本山理咲さんに聞く

始まりはいじめの投書、今悩みは幅広く

連載開始から今年で21年になる「明日がくる」。複数の中学校の教科書に掲載されるなど、紙面以外でも多くの人に親しまれています。作者の本山理咲さんは中高生に「自分の気持ちを大切にしてほしい」と願い描き続けます。

本山理咲さん。自然が豊かな長野県長和町で暮らし創作活動を続けています 本人提供

「1000回という数字に自分でも驚いている半面、まだ1000回という思いもあります」。本山さんは今の気持ちをこう話します。

連載は朝中高の前身「朝日中学生ウイークリー」で2004年に始まりました。いじめをテーマにした投稿欄に載せるイラストを担当していた本山さんに、編集部が漫画化を提案したのがきっかけでした。

当時、いじめをめぐる投書が編集部に多く寄せられていました。1994年に愛知県西尾市でいじめを苦に男子中学生が命を絶った事件が大きく報道され、2000年代に入ってもいじめは社会問題となっていました。連載初期は、投書をもとに被害者、加害者、傍観者などさまざまな視点でいじめを描く作品が多くありました。その後、友達や家族との関係、将来への不安など、10代が直面する幅広い悩みを取り上げるようになりました。

登場人物の心の動きを中心に伝えるストーリー。本山さんは読者の投稿に加え、生活の中で感じていることなどを参考に、ストーリーを考えるといいます。18歳の長男との会話やニュースから情報を得て、構想を練ることもあるそうです。

「自分ならどのような行動をとるだろう」「友達にどんな言葉をかけてもらったら元気になるだろう」と、いろいろな登場人物の立場になって考えることを心がけています。

「漫画を読んでくれた人の行動のヒントになったり、気持ちが少しでも楽になったりすればうれしいです」

「明日がくる」の初回(2004年4月4日号)の紙面

社会変化に伴う苦しさも

本山さんは、連載を続ける中で、子どもたちを取りまく社会の環境に関心をより深めるようになりました。連載が始まった04年以降、いじめを防止するための法律(いじめ防止対策推進法)ができたり、スクールカウンセラーを増やしたりと子どもを守るための対策が進んできました。

一方、いじめによる痛ましい事件はなくならず、不登校の生徒は増えています。インターネットやSNSが普及し、匿名で悪口を書き込んだり、うその情報を広めたりする問題も起きています。

「心が疲れたり、頑張りすぎたりしている中高生が心配」と本山さんは話します。

本山さんは数年前から通信制の大学で心理学を勉強し、認定心理士の資格を申請しています。今後、子どもたちの声を聞く活動にも挑戦したいと考えています。

中高生の読者へのメッセージ

「人生には、『自分はこれをしたかった!』と思える時がくると考えています。私は『明日がくる』の漫画を描いているうちに、心理学を学びたいという気持ちになりました。経験や体験の中で気づくことがあります。中高生のみなさんも自分の気持ちを大切に、いろいろなことに挑戦してください」

本山理咲(もとやま・りさ)

 1968年生まれ、神奈川県出身。90年に漫画家デビュー。著書に『毒母育ちのサナギさんの脱皮 ~ゆうちゃん先生のカウンセリングルームより~』(星和書店)など。中学生時代は演劇部、高校生時代は美術部に所属

漫画「明日がくる」

 2004年4月4日号で連載が始まる。学校生活や友達関係など、悩み多き中高生の心の動きをリアルに描く。教育出版と東京書籍の中学校道徳の教科書に採用されている。

(朝日中高生新聞2025年2月16日号)

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