「楽園」で思う存分

辛酸さんは、東京都内にある私立の女子校、女子学院中学・高校出身です。6年間を過ごした女子校は「楽園」。10代の多感な時期、「異性の目を気にせずに、自分の好きなことを見つけられた」と語ります。

「ブームに乗って、バンドをやってみたり、ラップを作ってみたりと、異性の目があったら、恥ずかしくてできなかったと思うようなことが、女子校だからできました」

大学受験のストレスを解消するため、同級生と丸めた新聞紙を持って、屋上でなぐり合ったことも、「楽しい思い出」と振り返ります。

また、女子だけの環境では、生徒会や文化祭、体育祭などで、共学だったら、女子はサブに回されるかもしれない立場も女子が担います。

「そういう面で、生きる力みたいなものは養われた気がします。社会に出たあとも、向上心が強い人が多い印象。校風による影響もあるでしょうが、慈善活動や勉強を続ける人も多いのでは」

恋愛に焦り、先入観

しかし一方で、男子との恋愛に興味がわきだした年頃だったため、在学当時、共学の友達から「修学旅行のとき、男子が部屋に遊びにきて楽しかった」という話を聞くと、「取り残されたような焦りを感じた」そうです。

また、高校を出たあとは、「女子校でエンパワーメントされ、強くなりすぎて『歯に衣着せぬ物言いで怖い』と言われることがありました」。女子校出身者は「女性なのに気が利かない」などと指摘されることもよくあるそうですが、「現在は、性別によって役割を押しつける風潮は以前より減っている。喜ばしいこと」と辛酸さん。

とはいえ、悩みもあります。男性に対し「女性を見た目でジャッジしている」などの先入観があったり、逆に男性を神聖化しすぎたりして、自然に振る舞えないそう。社会に出たとき、「共学出身者のほうが性別問わず、人間関係を築きやすい面はあるのかも」。

女子学院中学1年生のころ。部活動では、マンドリンを演奏していました 本人提供

男女別の対応取れる利点

少子化で別学を共学化する流れに、辛酸さんは反対です。

「中学受験塾の先生が、男子は自身に対する客観性が低く自己肯定感が高い、女子は客観性が高く自己肯定感が低い傾向があると話していました。だからその先生は、男子に対してはコミュニケーションを取り合って客観性を養い、女子は褒めて自己肯定感を伸ばすと。そう考えると、男女別々の対応を取れる別学はいいと思います」

加えて辛酸さんは、別学のほうが過ごしやすい子の居場所がなくなることを心配しており、自分に合ったほうを選べる環境であってほしいと願います。

「別学の個性を伸ばしやすいところ、共学の男女問わず人間関係を築きやすくなるところ。別学にいても共学にいても、それぞれの良さを認め合っていきたいですね」

辛酸なめ子(しんさん・なめこ)

 漫画家・コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。著書に『女子校礼賛』(中央公論新社)『女子校育ち』(筑摩書房)など。

別学の朝中高特派員は

男女別学の学校に通う朝中高特派員に聞きました

当事者の意見を尊重して

Q 別学の長所と短所は?

男女で比べることが少なくなって良いが、考えを広げられないのが良くない(シリウスさん/東京都・中1)

Q 共学校だけになったら?

共学のいじめや暴力が怖くて学校に行きづらくなる人もいると思うので良くない。女子校の中高生しか味わえない青春もあると思う(カリメロさん/東京都・中3)

Q 共学のうらやましいところ

恋愛ができること(複数)

Q 別学について言いたい!

久しぶりに女子と会うとなかなか話しづらくなってしまいます。男子校ならではです(麦わらさん/東京都・中1)

別学反対と騒いでいるのは大人が多い印象なので、当事者の私たち高校生の意見をもっと尊重してほしい(ふみかんさん/埼玉県・高3)

(朝日中高生新聞2025年3月16日号)

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