相談

私は卓球部の部長です。去年の10月頃から「部活は上を目指した方がいい」「部活だからってがむしゃらにやりたくない、楽しく練習したい」と意見が割れるようになりました。

その頃に、生徒会に立候補しないかと声を掛けていただきとても悩みました。親に相談したら「そういう時助け合うための仲間だから、部活の皆がいいと言ってくれたら立候補した方がいいよ」と言われたので部員に相談して、立候補を決めました。

その後、当選しましたが想像以上の仕事量で12月頃から部活に行く時間が減ってしまい、部活の問題にしっかり向き合えませんでした。先生に相談してミーティングを開いた時には、外部コーチとの関係がうまくいかない、土日の部活動に参加する人が少ない、部活中の態度が良くない、部活のスケジュールが把握できていない、など問題が沢山出てしまいました。

挙げ句の果てに「どうして生徒会までやろうとしたの?」と聞かれて、どうすればいいか分からなくなってしまいました。その後1人が退部し、やる気を失っている人もおり、再来月には最後の大会があります。どうすれば一人一人に寄り添ってあげられるでしょうか。
(そらさん 茨城県 中学3年生)

汐見夏衛さんの回答

そらさん、こんにちは。ご質問ありがとうございます。

部活動の部長と生徒会の両方をされているとは、本当に本当に大変な思いをなさっているだろうと思います。

部長を任され、さらに生徒会の立候補の声かけをされたということは、それだけそらさんがこれまで部活にも学校生活にも熱心に誠実に真面目に取り組んできたことの証であり、周りから信頼されている人望のあつい方だということでしょう。

でも、学校にせよそれ以外の場所にせよ、社会というのは残念なことに、自然の流れに任せていると、そらさんのような真面目で頑張り屋さんで、何事にも真剣にまっすぐ取り組み、何事にも不平不満をもらさない人間に、様々な重圧が集まってしまうという良くない性質があります。

みんなのためにと人がやりたがらない仕事を引き受け、頑張って一生懸命こなしているうちに、いつしか周囲の人は『この人がやってくれている』という意識が薄れてきて、『これはこの人の仕事である』(本来は自分たち全員に関わることでありみんなで協力すべきなのに)という認識に変わってしまうのだと思います。本当に良くないことなのですが…。

すると、ひたすら善意でやってくれている(だって部長も生徒会も報酬なんて無いボランティアみたいなものですよね)その人が、まるで全責任を負うべき責任者であるかのような錯覚に陥っていきます。

災害などの支援をするボランティアの方もこういう目に遭うことがあるそうです。本当にただただ奉仕精神で駆けつけてお手伝いをしているのだから、受けた側は感謝することしかないはずなのですが、ボランティアの人に向かってああしろこうしろと強要したり、不満があったら怒鳴ったりする人もいるのだとか。

こういう話を聞くたびに私は、人間というのは他人の善意に慣れてしまうのだなと寂しくなります。最初は感謝をしていても、継続しているうちにだんだんとそれが当たり前になり、してもらって当然だと無意識に考え、そうなると不平不満が出てきてしまうのです。
私自身ももちろんそういうことがあり、お仕事でも私生活でも普段お世話になっている方に対して、善意からしていただいていることに慣れてはいけない、感謝を忘れてはいけないと、自分に言い聞かせるようにしています。そうしないと、当たり前のように受け止めてしまいかねないと思います。

前置きが長くなってしまいました。

つまり、そらさんの周りの方も、申し訳ないですが、そういう認識に陥ってしまっているのではないかなと感じました。

そらさんは、自分がちゃんとできていないと落ち込んだり、自分を責めたりする必要はありません。むしろ周りに怒ってもいいくらいです。

『どうすれば一人一人に寄り添ってあげられるでしょうか』という最後の一文を拝読したとき、そらさんの優しさ誠実さに胸を打たれるとともに、きっと生きるのが大変だろうなと思いました。

そらさん、あなたは、周りの人ひとりひとりに寄り添う必要なんてないんですよ。あなたと周りの人は同じ立場です。

親が子どもに、教師が生徒に寄り添うのは大切な役割ですが、
子どもが子どもに、生徒が生徒に寄り添うのは、仕事や役割ではなく、善意つまりボランティアなのです。

そこには責任は生じないし、責任を負わせることはあってはならないと私は思います。余裕があるときに、身近な誰かに寄り添ってあげる、それは素敵なことですが、だからと言って必ずやるべきことではないのです。

そらさん自身がたくさんのことを引き受けていて余裕がないときに、それ以上に背負い込む必要はないのです。

こう言ってはなんですが、誰にも何にも言われなくても真剣に頑張る人は頑張るし、誰かから何か言われても頑張らない人は頑張らないし、やめる人はいつかはやめてしまいます。人を変えるというのは難しいものです。

冷たいようですが、ある程度そういう割りきりをしながら生きていかないと、自分が苦しくなってしまいます。

部活動においてはそれぞれモチベーションが違って当然ですし、意見が割れることもあります。みんなが同じ熱意と意見を持つことはなかなかありません。

そういう状況で、どうやってバランスをとりながらみんなで続けていくかというのが部活動において大事なことなのですが、それを考えたり実践したりする責任は顧問やコーチにあると思います。一介の生徒である部長が、その責を一身に負うべきではないのです。もちろん少しでも良い雰囲気の部活にしたいと思いそれを頑張るのは素敵なことですが、責任はありません。

もしも誰かが辞めても、誰かが熱心に練習しなくても、それは部長の責任などでは全くありません。辞めた人や練習しない人の責任…というか、その人自身の選択、その人の人生です。

そらさんは優しすぎて、そして真面目すぎるのかなと思います。もう少し肩の力を抜いて、自分の荷物を減らしてもいいのですよ。

そして、「ええい、もう知るか! 他人のことなんか知るか! 勝手にやれ! なるようになる!」という気持ちで、思いきって自分以外の荷物は手放してみましょう。

そして、まずは自分のこと、目の前のこと、余裕をもってできることだけに取り組みましょう。

できることを、できる範囲で、無理なくやればいいのですよ。それが何事も長続きさせる秘訣です。無理をすれば、その事だけでなく他の事まで続けられなくなってしまうかもしれません。

そらさんの人生です。あなたがいちばん大事です。

自分自身の心と体の健康をまず第一に考えて、大切にしてくださいね。

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