建築家の藤本壮介さん(左)にインタビューする、朝中高特派員=3月27日、大阪市の夢洲

 大阪・関西万博の会場はどんな場所? 開幕がせまる3月27日、万博の会場デザインプロデューサーで大屋根リングを設計した建築家の藤本壮介さん(53)に、読者代表の朝中高特派員が取材しました。大屋根リングや会場の中を歩き、藤本さんが込めた思いなどを聞きました。(小貫友里)

日本の伝統技術をもとに木組み

万博会場に入るとすぐに、大屋根リングの木の格子が見えました。高さは最も高いところで地上約20メートルもあります。1周約2キロのリングの内外にパビリオンが集まっています。藤本さんは、「リングに沿って歩くと大体のパビリオンを見られます」と説明します。

大阪・関西万博の会場=3月1日 ©朝日新聞社

万博は世界中から多くの人やものが集まるイベントです。文化や最新技術を紹介し合い交流して、地球規模の課題の解決を目指します。今回は158カ国・地域が参加を表明。中にはウクライナやイスラエル、パレスチナなど戦争をしているところもあります。

「戦争が起き、分断が激しくなっているこの時代に、世界の約8割の国が集まって、半年間一緒にいる。多様でもちゃんとつながり合えることのシンボルとして、万博にはすごく意味がある」と藤本さんは考えました。一目で、「世界がつながっている」というメッセージが伝わるように、会場の象徴的なデザインに円を使いました。

リングの屋根の下に入ると木組みの構造が立ち並び、圧巻の光景が広がります。木組みは、リングのために開発された工法でつくられています。京都・清水寺の舞台などにも使われた日本の伝統的な「貫接合」をもとに、現代の法律に合わせ、強度を高めたものです。建設会社が実験に数カ月をかけて開発しました。リングの建設で一番大変だったと藤本さんはいいます。

1周約2キロの大屋根! 世界最大の木造建築物

自然素材を多用

藤本さん(右)と会場内を歩きました。奥に見えるのは外観が竹でできた「マレーシアパビリオン」=3月27日、大阪市の夢洲

会場内には木造のパビリオンがたくさんあります。藤本さんは、木や竹など自然素材が多用されているところが「まさに、今回の万博の特徴」といいます。日本では大きな建物は、コンクリートや鉄でつくることが大半です。でも建材に木を使うことは地球温暖化の防止につながるなど環境に良いとして、近年、技術開発も進んでいます。万博で、いまが「木造でつくる時代への転換点だと、世界的にも認識されていくのでは」と藤本さんは期待を込めます。

大屋根リングの屋上にのぼると、何にも遮られない大きな空が広がっていました。藤本さんはリングで「空を切り取りたい」と考えたそうです。「空は地球をくるんでいます。一つの空を世界中が共有しているんだよ、と伝えたいなと思いました」

大屋根リングの上からは、会場が見わたせます=3月27日、大阪市の夢洲

大屋根リングは「最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認められました。「これだけ大きな建物をつくったのは初めて。リングがつながって一周したときには感激しました」と藤本さんはほほえみました。

「僕らは今回の万博を若い方々のためにやっています。望めば世界は一つにつながれること。そのすばらしさを感じてほしいです。これからはもっと国際交流をしながら社会をつくっていくと思います。万博がそのきっかけになってほしいですね」

大阪・関西万博の会場=3月1日 ©朝日新聞社

(朝日中高生新聞2025年4月13日号)

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