
10代の心を繊細に描く、小説家・汐見夏衛さんによるお悩み相談のコーナーです。友達、学校、家族、将来のこと…。誰にもいえない悩みや、ちいさなモヤモヤにお答えします! いじめられているわけではないし、友達もいる。けれど学校に居場所がなくて苦しい…というお悩みです。汐見さんの回答は…?
相談
私は自律神経失調症を患ってしまい、夜布団に入ると目が覚めてしまい、そのため昼間睡魔に襲われてしまいます。
私は、普通にしようとすればするほど浮いてしまって、クラスに友達がいないわけではありませんが特別仲の良い友達がいるわけでもありません。ペアを好きに組んでなど先生から指示があったときや、休み時間みんながワイワイしてる時など、居心地の悪さを感じてしまいます。いじめられてる訳でもなく、他のクラスには仲の良い友達もいます。
ですが、学校に行きなくないと感じてしまい、高校3年になってから欠席が増えてしまいました。贅沢な悩みと思われてしまうのは当然ですが、私にとっては苦しくて辛いのは事実です。とても生きにくさを感じてしまいます。卒業まであと少しですが、学校には通いたいです。何か気分を切り替える方法はないものでしょうか。
(Fairyさん 京都府 高校3年生)
汐見夏衛さんの回答
Fairyさん、こんにちは。
質問を頂いてから時間が経ってしまったので、もう今は高校を卒業されて、新しい生活の中にいらっしゃることと思います。
遅くなってしまって本当にごめんなさい。
今さらですが、もしかしたら今後の人生で同じような問題を抱えることもあるかもしれませんので、そのときのためと思って、少しお耳をお貸しいただけたら嬉しいです。
体調のことと、学校生活のことで、お悩みを抱えていらっしゃったのですね。
私は恥ずかしながら医学には大変疎く、自律神経失調症については名前は見聞きしたことがあったものの、どんな病気なのかしっかりとは知りませんでしたので、今回初めてちゃんと調べてみました。
医療情報サイト「メディカルノート」によると、自律神経失調症とは交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることで起こるさまざまな症状を総称したもの、ということなのですね。
人によって現れる症状はさまざまということですが、身体的な症状としてはだるい、眠れないなどの全身症状と、頭痛、動悸、息切れなどの部分的な症状、精神的な症状としては情緒不安定、いらいら、不安感など。
上記のどれかひとつだとしても、ずっと続けば大変つらい症状ですよね。複数ならなおさらだと思います。
私は肩こりくらいしか継続的な不調はないのですが、たまに体調を崩した時に頭痛をおこしたりすると、痛いだけでなくぼーっとするし、集中力はなくなるし、やる気が起きず仕事も家事も手につかない…という状況になります。
不眠もあまり経験はないのですが、忙しく過ごした日に、体は疲れているのに疲れすぎて逆に眠れなかったり、または翌朝早く起きなくてはいけない夜に限って寝つきが悪かったりすると、いらいらするし焦るし、精神的にもしんどいなと感じます。
ちゃんと寝られなかった日には、昼間起きているときにもいつもではありえないミスをしたり、そんなつもりもないのにうたた寝をしてしまっていたり、なかなか普通の生活はできません。
こういった症状がたった1日、2日だけでも十分大変なのに、もしもそれが日常的な不調となり、何日も、何週間も続くとしたら…、想像するだけで苦しくなります。
もしも日常的にそのような状態になったら、学校に行って授業を受けるのすらつらいでしょう。
Fairyさんは『夜布団に入ると目が覚めてしまい、そのため昼間睡魔に襲われて』しまうとのことですが、病気の症状によって日常生活に影響が及んでいるということですね。
本当に大変な状況だと思います。
お医者さんにはかかっておられますか?
私は素人であるため、医療について知識なしにアドバイスをすることはできませんので、回答は控えさせてください。(相談をつのっておきながら申し訳ないです)
もし病院に通われているのでしたら、専門家の方々に自身の状態をお話しし、投薬などのご相談されることをおすすめします。
お役に立てなくてごめんなさい。ご体調が少しでも良い方向に向かい、平穏な日々を送れるようになることを願っています。
後半のご相談については、私でも少しはお力になれるかもしれませんので、そちらの内容についてお話ししていきますね。
『クラスに友達がいないわけではありませんが特別仲の良い友達がいるわけでもありません』
『ペアを好きに組んでなど先生から指示があったときや、休み時間みんながワイワイしてる時など、居心地の悪さを感じてしまいます』
ということですが、私も何度かそのような状況になったことがあります。
(私の場合は、他のクラスにとても仲のいい友達がいて、クラス替えで離れてしまったものの休み時間などに友達のクラスへ遊びに行っていて、そうしているうちに自分のクラスでの友達作りのタイミングを逃してしまったのですが…。その1年はなんとかしのげましたが、ペアやグループを作るときに居たたまれない気持ちになったのを思い出しました。)
大人になってしまえば、職場に特別仲の良い人がいなくても何とでもなる、というか、それが多数派になると思うのですが、学校やクラスの中ではそうもいかないですよね。
『贅沢な悩み』だなんてまったく思いません。
他に話せる人がいたとしても、いつも一緒に行動するような友達がいないと、周りの目が気になったり、なんとなく浮いてしまう感じがするの、よく分かります。
『学校に行きたくないと感じてしま』うのも当然だと思います。
でも、Fairyさんのすばらしいところは、『苦しくて辛』くて、『とても生きにくさを感じて』いるのに、
『卒業まであと少しですが、学校には通いたい』という前向きな気持ちを持っておられることです。
Fairyさん自身にとっては当たり前かもしれないですが、なかなか誰にでもできることではありません。
つらいことからは逃げたくなるのが人間の自然な心の流れですが、あなたはご自分の気持ちをコントロールし、今の自分にとって必要で大事なことを優先して行おうとする誠実さが感じ取れて、すごいなあと感心いたしました。
その上で、『何か気分を切り替える方法はないものでしょうか』というご質問に、どう答えたらいいかなと考えました。
今はもうすでにご卒業されていると思われますので、この回答は、Fairyさんから頂いたご相談における問題点を、人生において、「するべきこと」と「したくない気持ち」が両方目の前に現れた時に、どうすればいいか、という少し大きなくくりにして、読んでいただけたら嬉しいです。
生きていると、どうしても、そのような状況に置かれることは多々あると思います。
たとえば、試験勉強をしないといけないけれど眠たいから寝てしまいたいとか、マラソンを走り始めたけれど苦しくて途中棄権したいとか、生きるために働かないといけないけど仕事がつらくて辞めたいとか。糖分や塩分を控えないといけないのに甘いものや塩辛いものがどうしても食べたい、というようなこともあるでしょう。
そのような時に、どうすればいいか。
私自身もそういう状況で賢明な判断ができないことは多々あるので、偉そうなことはまったく言えないのですが、今後の自分に言い聞かせるためにも、考えてみました。
たぶん、「どちらの選択肢が自分の人生のためになるか」を考えるのが大切なのではないかと思います。もっと分かりやすく考えるなら、「どちらを選ぶと明日の自分が助かるか」。
たとえば試験勉強。テスト範囲の勉強がまだ終わっていない、でももうこんな時間だし眠い、というとき、無理をしてでも勉強しておかないと悲惨な結果になってしまうか、睡眠不足の状態で試験を受けたほうが悲惨な結果になってしまうか、どちらの可能性が高いかを考える。
もし、もう少し起きていても体調に問題を生じない程度の睡眠時間は確保できそうなら、あと何分だけとかあと何ページだけ頑張ってみる、もしくは早起きして頑張る。これ以上睡眠時間を減らすと試験のとき集中できないかもしれないようなら、勉強はすっぱり諦めて心身のコンディションを整えるほうに考えを切り替える。
Fairyさんのお悩みの場合でしたら、つらい思いをしながらでも学校に行くことと、自分の心を大切に守るため無理をするのはやめること、どちらが明日の自分、未来の自分にとって糧になるか。
学校というのは、もちろん行けるなら行くに越したことはないのでしょうが、心身のバランスを崩してまで行くことはないのです。
一度崩れたバランスを立て直すのは容易なことではありません。
無理をしたせいで、しばらく立ち直れないくらいに崩れてしまっては、元も子もないのです。
まずは、どちらの道を選んだほうが傷が浅くすむか、自分の気持ちと相談しながら決めないといけません。
そして、なんとか折り合いをつけてどちらかの道を選んだあと。
選ぶのに悩むくらいですから、決断できたところで、選ばなかった道への心残りや未練、選んだ道での不安や苦痛があるのは当然です。
とはいえ自分で選んだ道ですから、なんとか進まないといけませんよね。
そういうときに『気分を切り替える方法』は、たとえば他のことを考えるとか、趣味や楽しいことを考えるとか、好きなものをたくさん食べるとか好きなだけ寝るとか、色々あると思いますが、
「選ばなかった道を選んだときの自分はどうなっていただろう」と想像してみる、というのもひとつの方法かなと思います。
息苦しさや生きづらさを感じながら頑張って学校へ行くと、負の感情がたくさん湧いてくるでしょう。
そのときに「じゃあ、もし休んでいたらどうだろう?」と、もうひとりの自分を想像してみる。
もしかしたら、休んでいるからといって気楽というわけではなく、欠席が増えることへの焦りや、将来への不安で、学校にいる自分よりも悩んでいるかもしれません。
逆に、休んだ自分(想像の中)のほうが学校で耐えている自分よりも幸せそうだと思うなら、道を選び直してもいいのです。
人間はそうやって、選んだものと選ばなかったものを適宜比較しながら、その都度自分の素直な気持ちを見つめながら、右往左往して試行錯誤して生きていくものなのかなと思います。
回答が遅くなってしまったこともあり、具体的な方法をお答えできず、ふんわりした回答になってしまってすみません。
Fairyさんがこれからも、できるだけ後悔なく、できるだけ苦悩は少なく、ご自分の人生を歩んでいかれますよう祈っております。
当サイトとLINEニュース「朝日中高生新聞」で、汐見さんのお悩み相談コーナーがスタート! 友達や家のこと、恋のこと…だれにも言えないもやもやした悩みを一緒に考えていきます! 下記のフォームから応募ください。汐見さんへの質問や作品への感想もお待ちしています。