子どもたちの食物アレルギー増加
食べ物が原因となる食物アレルギーは近年、症状が出る人が増えているといいます。アレルギーの仕組みや症状、対策などをまとめました。
どういうもの?
免疫の働きで「異物」を攻撃
アレルギーは、体に備わっている免疫機能によって引き起こされます。免疫とは、ウイルスや細菌など、体の中に侵入してきた異物から体を守る仕組みのことです。
免疫は健康のために必要ですが、食べ物や花粉など、本来体に害を与えない物質に対しても過剰に反応してしまうことがあります。その結果くしゃみや発疹、ぜんそくなどが現れ、その状態をアレルギーと呼んでいるのです。
アレルギーの原因となる「アレルゲン」が体内に入ると、異物を捕まえて外に排除しようと「IgE抗体」という物質が大量に作られ、皮膚や粘膜にある「マスト細胞」と結びつきます。この状態で再度アレルゲンが体内に入り、IgE抗体とくっつくと、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が出されます。これらがかゆみなどのアレルギー症状を引き起こすとされます。

症状と対策
約10年で12万人増え52万人に
小学生や中高生に増えているのが食物アレルギーです。日本学校保健会の2022年度の調査によると、全国の公立小中高校に、食物アレルギーがある子どもは13年の前回調査より約12万人多い約52万7千人。そのうち中学生は14万6015人、高校生は9万8113人でした。
食物アレルギーは食べ物に含まれるたんぱく質などを異物と判断し、じんましんやせき、嘔吐などの症状を引き起こします。体がかゆくなったり、目や口がはれたりすることもあり、人によってさまざまです。全身性の急激なアレルギー症状が起こる「アナフィラキシー」は、命に危険が及ぶこともあり注意が必要です。

中高生で発症するケースも
食物アレルギーに詳しい国立病院機構相模原病院臨床研究センターの海老澤元宏さんによると、ニワトリの卵や、牛乳、小麦などのアレルギーは赤ちゃんのときにみられることが多いといいます。症状は成長するにつれて出なくなることがありますが、小麦やえび、果物など、食べ物によっては中高生になってから発症するケースもあるそうです。
近年は木の実類のアレルギーが増えているといわれます。海老澤さんは「くるみの消費量やカシューナッツの輸入量などが増え、アイスやおかしに入ることも増えたからでは」と話します。
アレルギーが疑われる場合は病院で検査することが大切です。食物アレルギー研究会のウェブサイトでは、検査できる医療機関を紹介しています。

食品表示を義務づけ 適切に避ける
症状を引き起こさないためには、原因となる食べ物を適切に避けることが何より大切です。加工食品の表面には「マヨネーズ(卵を含む)」「チョコレート(乳成分を含む)」などのアレルギー表示があります。
このように、国は健康被害を防ぐために、症例数や深刻さをふまえ、えび、かに、くるみなど8品目を「特定原材料」に指定(下に一覧)。加工食品などに表示を義務づけています。消費者庁は25年度中に、新たにカシューナッツの表示を義務化し、ピスタチオは「推奨」とする方針です。
特定原材料(表示義務)
えび かに くるみ 小麦 そば 卵 乳 落花生(ピーナツ)
特定原材料に準ずるもの (表示推奨)
アーモンド あわび いか いくら オレンジ カシューナッツ キウイフルーツ 牛肉 ごま さけ さば 大豆 鶏肉 バナナ 豚肉 マカダミアナッツ もも やまいも りんご ゼラチン
学校給食や外食でも対策
対策は学校にも広がっています。東京都調布市では、公立小学校で12年、食物アレルギーによる児童の死亡事故が起き、その後アレルギー対策に力を入れてきました。普通食はグリーンのトレー、給食では出されない食材にアレルギーはありますが普通食を食べる子どもはブルーのトレー、アレルゲンを除いた除去食はピンクのトレーで配膳するなどの対応をマニュアルとして作成。「調布モデル」として全国に広がっています。
原材料のアレルギー表示は、大手の外食チェーンやホテルでは当たり前のように見られます。しかし、小規模な飲食店や宿泊施設ではまだ広まっていないところもあり、海老澤さんは「もっと広めていく必要がある」と指摘します。

「ない」人にもできることを
アレルギーがなくても、周りのためにできることがあります。アレルギーの成分をうつしてしまわないよう、食後も手を洗うことや、症状が出る危険がある人とは、食べ物の交換は控えましょう。
周りの人の異変に気づいたらすぐに大人に知らせて、病院でみてもらうことが大切です。緊急性の高いアナフィラキシーを発症した場合は、症状を抑えるための補助治療剤「エピペン」を速やかに使用し、救急車を呼びましょう。
(朝日中高生新聞2025年4月20日号)
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