メルカリ社長が設立「山田進太郎D&I財団」
STEM分野の進学率UP目指す
STEM分野に進む女性の大学進学率を上げるため、女子中高生向けにさまざまな取り組みを行っている公益財団法人があります。フリーマーケットアプリ「メルカリ」の山田進太郎社長が設立した「山田進太郎D&I財団」です。メルカリの社長がなぜ? 活動のきっかけや内容、STEM分野における課題について聞きました。
実力あるのに思い込みが壁?
山田進太郎D&I財団は2021年に設立されました。STEM分野でのジェンダーギャップの解消に取り組むきっかけは、メルカリの採用活動でした。山田社長が従業員の多様化を図るため、女性の技術者を採用しようとしたところ、そもそもSTEM分野で働く女性が少なく、思うようにいかなかったのです。
原因をたどっていくと、大学の時点でSTEM分野に進学する女子学生が少なく、さらにひもとくと、高校の文理選択のタイミングで、理系を選ぶ女子生徒が少ないということがわかったといいます。
世界各国の15歳を対象とする22年の学習到達度調査「PISA」で、日本は「数学的リテラシー」で5位、「科学的リテラシー」で2位と世界トップレベル。男女のスコア差も縮小傾向で、女子は男子と比べて遜色ないと財団はいいます。一方、STEM分野への女性の大学進学率は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国で最低ランクです(財団調べ)。背景には、無意識のうちに「女性だから理系が苦手」だと思い込んでいることや、母親を始め、理系に進む女性のロールモデル(模範になる人物)が身近にいないことがあるとしています。

財団は35年度までにSTEM分野で大学に進学する女性の比率を、OECD加盟国の平均である28%に引き上げることを一つの達成基準としています。この数値は、財団設立時に、文部科学省の学校基本調査やOECDのデータに基づいて算出したものです。
奨学金制度や現場見学ツアー
財団は目標達成のため、女子中高生に向けて、主に二つの活動を行っています。
一つは奨学金。文理選択で理系を選んだ高校1、2年生を対象に、返済の必要がない10万円を支給する取り組みです。所得金額や成績は関係なく、年間550人が選ばれます。応募は年々増えていて、昨年度の応募者は5千人弱。奨学金は、塾代やタブレット代、学費など、理系の進学に役立つものに使うことができます。
二つ目の取り組みは、STEM領域の学びや仕事の場で女子中高生たちがSTEM分野に関連した体験をするツアー「Girls Meet STEM」(GMS)です。昨年6月に開始され、26大学31社(昨年11月末時点)と、生徒約1800人(2月末時点)が参加しています。今年度は40大学、100社以上、1万人の参加を目標としています。
今年度からは、STEM分野の学生や社会人が母校を訪れ、中高生に進路選択やキャリアについて伝える取り組みを始めています。
ドイツ「ガールズデー」参考に
GMSのヒントになったのは、ドイツの「ガールズデー」です。女性割合が4割未満の職業や研究分野を、10代の女子生徒たちが体験します。理系分野や技術職で働く女性と実際に出会うことで、性別の固定観念にとらわれないキャリア選択をしてもらおうと01年に始まりました。国からの助成を受けて年1回、全国的に行われます。
これまで年間1万5千件のイベントが企業や大学によって開催され、約240万人の生徒らが参加。22年のドイツの調査では、ガールズデーに参加したあと、「卒業後にIT分野や技術分野に進みたい」と考える女子生徒は約10ポイント増えました。

(朝日中高生新聞2025年4月27日号)
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