
南米ペルーで20年間 貧しい人に寄り添う
ローマ教皇庁(バチカン)は8日、フランシスコ教皇が亡くなったことに伴い次の教皇を決める秘密選挙「コンクラーベ」で、米国出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿(69)を第267代教皇に選出した。教皇名はレオ14世を名乗る。米国出身者がローマ教皇に選ばれるのは初めて。
プレボスト枢機卿は1955年、米シカゴ生まれ。27歳ごろに司祭となり、南米ペルーに派遣された。その後、米国に戻ることはあったが、司祭として約20年間をペルーで過ごすなど、米国外に活動の中心を置いてきた。今回の候補者の中では中道派とみられていて、貧しい人や移民に寄り添う姿勢や気候危機に対する問題意識などについては、フランシスコ前教皇に通じるものがあるようだ。
これまでローマ・カトリック教会では、枢機卿たちの間に米国出身者を教皇に選ぶことに警戒感があるとされてきた。しかし、プレボスト氏はペルーを中心に南米を拠点としてきたことから、米国にとどまらない国際的な経験のある人物として、コンクラーベが始まるころから有力候補として名前が挙がっていた。
カトリック信者14億人のトップ

ローマ教皇はキリスト教の3大教派の一つ「カトリック教会」の最高指導者。信者は世界で約14億人とされ、そのトップである教皇は信仰に関する決定権や、高い地位の聖職者を任命する権利を持つ。
今回のコンクラーベには投票権を持つ80歳未満の枢機卿133人が参加。ミケランジェロのフレスコ画「最後の審判」で有名なバチカンのシスティーナ礼拝堂が会場となった。投票は7日夕方から始まったが、8日午前にかけて行われた3度の投票を経ても決まらなかった。礼拝堂の煙突から新教皇の選出を知らせる白い煙が上がったのは8日午後6時すぎ。煙突が見えるサンピエトロ広場には、世界中から信者や観光客が集い、大聖堂のバルコニーから新教皇が姿を見せると大きな歓声が起きた。
ゼレンスキー大統領「道徳的な支援を」
レオ14世の選出に、各国首脳から祝福のメッセージが贈られた。米国のトランプ大統領は、初めて米国出身者が選ばれたことについて、自身のSNSに「本当に光栄だ。喜ばしく、わが国にとって大きな誇りだ」と投稿。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ローマ教皇庁が一貫して国際法を支持してロシアによるウクライナへの軍事的侵略を非難してきたと指摘し、「ウクライナが正義を取り戻し、持続的な平和を得るための努力に対し、バチカンから継続した道徳的、精神的な支援を望んでいる」とSNSにつづった。
コンクラーベ
カトリック教会のトップである教皇の死去や退位に伴い、行われる選挙。教皇に次ぐ高位聖職者の枢機卿たちによる秘密選挙で、枢機卿たちは外部との接触を一切禁じられ、録音機器や携帯電話など記録や通信の手段は持ち込めない。投票は3分の2以上の得票者が出るまで、無記名で繰り返される。新しい教皇が決まれば礼拝堂の煙突から白い煙を、決まらなければ黒い煙を出して知らせる。
(朝日中高生新聞2025年5月11日号)

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