江藤氏「コメ買ったことない」発言で石破政権に打撃

石破茂首相は21日、江藤拓農林水産相(64)を事実上辞めさせる更迭をして、後任に元環境相の小泉進次郎衆議院議員(44)を起用した。昨年10月の政権発足後、閣僚の辞任は初めて。東京都議会議員選挙や参議院議員選挙が迫るなか、支持率低迷に悩む石破政権にとってさらなる打撃となった。

コメに関する発言の責任を問われ、辞表を提出した江藤拓前農林水産相=21日、首相官邸 ©朝日新聞社

18日に佐賀市で開かれた政治資金パーティーで、江藤氏が「コメは買ったことがない。支援者の方々がたくさんくださる。売るほどあります」などと発言したのが事の起こり。政府による備蓄米の放出後もコメの高騰が収まらないなか、さまざまな方面から批判が噴き出した。

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石破首相は翌19日、江藤氏を厳重注意したうえで続投を指示。江藤氏も「備蓄米放出を決断した本人でもあるので、最後までやらせてもらいたい」と意欲を見せた。だが立憲民主党など主要野党5党は20日、江藤氏の更迭を求める方針で一致。応じない場合は江藤氏に対する不信任決議案の提出を検討する構えを見せた。

こうした動きから江藤氏は21日、首相に辞表を提出。記者団に「所管大臣として極めて不適切な発言をしてしまった。心からおわびを申しあげたい」と述べた。石破首相は辞表を受理した後の参議院本会議で、「農水行政の重要課題の解決に停滞があってはならないという観点から辞職を認めた。任命責任は全て私にあり、国民に改めて深くおわびする」と話した。

首相、「5キロ3千円台でなければ」

後任の小泉氏は2015~17年に自民党の農林部会長を務め、農協改革などに取り組んだ経験がある。石破首相から起用を伝えられた後、記者団に「コメ担当大臣だという思いで集中して取り組みたい」と語った。就任会見ではコメの価格を抑えるため、備蓄米を任意の業者に売る「随意契約」を検討すると表明。これまでは競争のうえ、高い価格を示した業者に売り渡す「入札方式」を採用してきたが、28~30日に予定していた4回目の入札は急きょ中止となった。

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石破首相は21日の国会での党首討論で米価について、「(5キロあたり)3千円台でなければならない」と明言。質問した国民民主党の玉木雄一郎代表から「(実現できなければ)首相として責任をとるのか」と追及されると、「責任をとっていかねばならない。仮に下がらなければ、説明するのが政府の責任だ」と述べた。

農協改革

 全国にある農協の指導役として1954年に設立された「JA全中」について、農協を監督・指導する権限を廃止するなどした一連の政策のこと。JA全中の監督・指導によって各農協などが地域の実情に合わせた自由な経営を妨げられているとの指摘があり、安倍晋三政権のもと2015年に関連の法律を改正。約60年ぶりに組織の形態を変えることになった。今年で改革から10年が経つが、目立った成果はあがっていないとの指摘もある。

(朝日中高生新聞2025年5月25日号)