訪れるたびに、新しい発見

東京ディズニーランド(千葉県浦安市)が開園してから今年で40年。ウォルト・ディズニーがかつて「永遠に完成しない」と言ったように、常に進化し続けてきました。これまでを振り返り、長年の人気の理由を探ります。(小勝千尋)

今までの遊園地と違う…当時驚き

東京ディズニーランドは、米国国外で初のディズニーパークとして1983年4月15日に開園しました。開園後、しばらくは自由にアトラクションに乗れるパスポートは平日だけ。土日は入園券とアトラクション券を買う形式でした。

運営するオリエンタルランド広報の堀池和さんは「遊園地は子どものものという考えが強かったのか、はじめは大人はアトラクションに乗らないことも多かったそうです。お弁当の持ち込みが禁止なのも衝撃的だったようで、『これまでの遊園地とは何か違う』と思われていたようです」と振り返ります。

当時は難しいといわれていた「年間入園者数1千万人」を1年目の84年4月2日に達成。開園5周年を迎えた88年には、最寄り駅のJR京葉線舞浜駅が開業しました。アクセスが良くなり、周辺にホテルもできたことから、全国からのお客さんが増えました。「新しいアトラクションやパレードも導入されました。5周年のタイミングから第2のパーク、今でいうディズニーシーをつくろうとめざしはじめました」

「キャラに会う」楽しみ方増える

90年代後半になると、新しいエリア「トゥーンタウン」ができ、常にミッキーマウスに会える施設が誕生。「それまではアトラクションを楽しむ方が主でしたが、この頃からキャラクターに会うことのニーズも増えてきました」

海外の文化を定着させることにも一役買っています。98年からはハロウィーン、2010年からはイースターイベントを開催しました。「季節を感じられるイベントとして、夏は水を使ったものなども取り入れています。年に1回だった方が、複数回来るようになりました」

「ミッキーの家とミートミッキー」 ©Disney

滞在型リゾートに

01年、海をテーマにした「東京ディズニーシー」が開園。本格的な食事やお酒が楽しめたり、スリルのあるアトラクションが多かったり、大人も楽しめるパークとして大人の来園割合も増えました。「二つのパークができたことで、滞在型で楽しむリゾートに変化していきました。宿泊の間もディズニーの世界にいられるホテルも開業しました」

13年に30周年を迎え、年間入園者数は3千万人を超えました。「何回も来園する方たちに、どうすればもっと新しいものを提供できるか考え、新エリアをつくることに。20年にオープンした『美女と野獣』のエリアですね」

24年には、ディズニーシーに「アナと雪の女王」などをテーマにした新しいエリアがオープンする予定です。ディズニーランドでは、27年にスペース・マウンテンをリニューアルします。

パークを訪れる中高生に向けて、堀池さんは「来るたびに違う発見ができる場所です。年齢によって気付くことも変わると思います。『今日は隠れミッキーを見つけよう』『建築様式に注目してみよう』『エリアごとの植物の違いを見てみよう』など、テーマを決めてパークを楽しむのもおすすめです」

夢からさめない工夫が随所に
テーマパーク研究者 山口有次教授

テーマパークの研究をする桜美林大学教授の山口有次さんは「ディズニーランドやシーでは、来た人を楽しませるためにあらゆる方面で工夫している」と話します。例えば、パークの中と外を分けるために、「視界を遮る『バーム』を作っています」。

パークにいる間は現実の外の世界がほとんど見えず、外からは一部のアトラクションや建物を除いて中を見ることができません。バックヤードや働く人の移動を見せない工夫もしています。「地下トンネルや建物の2階に通路をつくっています。エンターテインメントでは、裏側や楽屋を隠すのは当然だからです」

園内に持ち込めない食べ物を食べるためにパークの外に「ピクニックエリア」をつくったり、トイレの手洗いスペースの正面に鏡がなかったりするのも、「夢や魔法からさめないための工夫。結果的に園内での飲食率を上げたり、手洗い場の混雑を防いだりすることにもなっています。ビジネス的な視点からも、メリットがあるやり方をしています」。

世界のパークと比べるのも面白いといいます。「例えばフランスはエリアごとの境界線がしっかりしている。お城があるヨーロッパは、町ごとの境界線がしっかりしたものという考えがあるからです。文化や考え方の違いを理解した上でつくられています」

東京ディズニーランドのピクニックエリア ©Disney

バリアフリーにも力 

誰もがパークを楽しめるよう、バリアフリーにも力を入れています。視覚障害のある人に向けては、専用の音声ツールや、キャラクターやアトラクションの形を触って理解できる模型を用意。

パーク内の施設について説明したインフォメーションブックは、「障害のある人が事前に、どのアトラクションに乗れるか、どんなサポートを受けられるか、トイレや介護用ベッドのサイズはどれくらいか、といったことが全てわかるようになっています」。

中高生に向けて山口さんは「いろんな視点でパークを見てみて。ディズニーランドは学術研究の対象にもなる場所です。研究の視点で発見したことは、ほかのところにも生かせるかもしれませんよ」と話します。

東京ディズニーランドのあゆみ

▼1980

1983年 東京ディズニーランド開園

©Disney

1985年 「エレクトリカルパレード」スタート

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1987年 「ビッグサンダー・マウンテン」ができる

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1988年 開園5周年

©Disney

▼1990

1993年 開園10周年

1996年 「トゥーンタウン」オープン。ミッキーに常に会える施設ができる

▼2000

2000年
・ディズニーの世界観が楽しめる「アンバサダーホテル」オープン
・通常より短い並び時間でアトラクションに乗れる「ファストパス」を導入(現在は休止中)

©Disney

2001年 東京ディズニーシー開園

©Disney

2003年 開園20周年

©Disney

▼2010

2013年 開園30周年。パレード「ハピネス・イズ・ヒア」が始まる

©Disney

2015年 「スティッチ・エンカウンター」ができる

▼2020

2020年 「美女と野獣」をテーマにした新エリアができる

©Disney

(朝日中高生新聞2023年1月8日号)