津村記久子さんの文庫最新刊『サキの忘れ物』発売

大学入学共通テストや麻布中学校の入試問題に採用された短編など9編を収録した、津村記久子さんの文庫最新刊『サキの忘れ物』(新潮社)が発売されました。

649円(税込み)

津村さんは2005年に太宰治賞を受賞し、デビュー。

その後も数々の文学賞に輝き、2023年3月に刊行された『水車小屋のネネ』は、「本の雑誌が選ぶ2023年上半期エンターテインメント・ベスト10」の第1位に選出されるとともに、第59回谷崎潤一郎賞を受賞しました。

本書の表題作「サキの忘れ物」は、2021年の大学入学共通テスト「第2日程」の国語の問題に採用されました。高校を中退し、病院に併設された喫茶店でアルバイトをしている18歳の千春が主人公です。

「自分には何にも夢中になれるものがない」と感じながら漫然と日々を過ごしている彼女はある日、常連の女性客が置き忘れた文庫本を手にします。

それはサキという外国人の男性が書いた短編集でした。これまでに最後まで読み通せた本が1冊もない千春でしたが、その日から彼女の人生はゆっくりと、確実に変わりはじめます。

また、2021年の麻布中学校の入試問題に採用されたのが「河川敷のガゼル」です。

ガゼルという美しく珍しい動物が発見されたある町を舞台に、ガゼルが過ごす柵の周辺の警備員の仕事をすることになった「私」の視点を通して、ガゼルやガゼルを見物しにくる人々の様子が描かれます。

SNSに日々ガゼルの写真や動画をアップする女性、ガゼルをひたすら熱心に見つめる少年……。

2作とも、ままならない環境に身を置く若者が、その場所から抜け出すための希望となる「何か」をつかみ取る瞬間が描かれています。

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