50カ所で87種のデータを分析

調査は全国の1千カ所ほどで生き物の種類などを調べている「モニタリングサイト1000」だ。身近な里地や里山は約200カ所含まれていて、うち約50カ所でチョウの種類と数を調べている。今回はそこでしばしば見かけられた87種のデータが詳しく分析された。

1年にどのくらい減ったかという割合(減少率)を見ると、1番はミヤマカラスアゲハ(31.4%)で、1千匹が10年後には30匹ほどになるような減り方だ。オオムラサキ(16.1%)なども加えた計6種が15%以上の減少率だった。

また、ゴマダラチョウ(11.0%)、ギフチョウ(8.8%)、ウラギンスジヒョウモン(8.1%)、アカタテハ(7.4%)、イチモンジセセリ(6.6%)、キタテハ(6.5%)など28種が4%以上だった。

数を減らして近い将来に絶滅する恐れがある生き物を、環境省は絶滅危惧種に指定してレッドリストに載せている。減少率はその判定基準の一つで、15%以上は最も心配な「絶滅危惧1A類」に、4%以上なら「絶滅危惧1B類」や「絶滅危惧2類」と判定される減り方だ。

もっとも、絶滅危惧種を決めるときは調べる範囲が違うし、全体の個体数や現れる範囲なども考えなければいけない。34種の中で実際に絶滅危惧種になっているのは、ギフチョウとウラギンスジヒョウモンの2種(どちらも絶滅危惧2類)だけだ。

ただ、急激に減っているのは、普通にいると思われていたものがほとんど。以前にチョウの研究者たちが庭によく来るチョウを調べたことがあり、ベスト10のうち3種は今回、絶滅危惧種レベルの減り方をしていたイチモンジセセリ、アカタテハ、キタテハだった。それほどの減少率ではないにしても、都会の庭でおなじみのヤマトシジミやナミアゲハも、今回の調査では減っていた。

チョウは植物の花粉を運んだり、鳥やクモやほかの昆虫に食べられたりして、自然界を支えている。それが減ると幅広い影響が出るかもしれない。

田畑や雑木林 開発や放置で環境悪化か

里山を利用するしくみ作りが大切

これだけチョウが減ってしまった原因は何にあるのだろうか。

田畑や原っぱ、明るい雑木林などからなる里地や里山は、以前のように人々が日々の暮らしで使わなくなってしまった。開発されたり、放置されて暗い森に変わったりすると、前にいたチョウはすめなくなってしまう。農薬の使用、シカや外来種の増加が影響した可能性も考えられる。

里地や里山のチョウを守るには、里地や里山を持続的に利用するしくみを作ることが大切だ。そうした場所で活動する市民ボランティアに参加するなど、みなさんもできることからやってみてはどうだろうか。

解説者 米山正寛記者 朝日新聞東京本社科学医療部

(朝日中高生新聞2019年12月15日号)