「英検も、人と人のコミュニケーションであることに変わりない」と語る秀島史香さん 本人提供

英検の最難関である1級は、広く社会生活で求められる英語を十分理解し、使うことができるレベルです。合格した人たちは、どんな勉強法で臨み、どう社会に生かしているのでしょう。NHKのラジオ番組『ニュースで学ぶ「現代英語」』でナビゲーターを務めるラジオDJの秀島史香さんに聞きました。

コミュニケーションを大切に

英語との出会いは米国に引っ越した小6の時。英語が何一つわからない状態で、現地校に通うことになりました。

最初の3カ月くらいは、一言も発せられませんでした。このままではいけないと、勇気を出して「Hi」とクラスメートに声をかけたのが、すべての始まりでした。その子は「何、話せるの?」とびっくりして、うれしそうに「Hi」と返してくれました。自分から扉を開いていけば、向こうも返してくれる。コミュニケーションにおける私の原体験になりました。

実は、後に受ける英検の試験でも、このことを実感する場面がありました。

日本の大学に進み、1年生の秋に英検1級を受けましたが不合格に。苦戦したのは2次試験の面接です。社会問題について即興でスピーチする内容で、うまく話せずグダグダになってしまいました。

再受験に向けて取り組んだのは、ひたすらリハーサルをすること。部屋の中でスピーチを録音し、聞き直しました。いろいろな質問を想定し、答えを考えては、頭の中にストックをつくります。聞く人が心地よい速さ、間のとり方を心がけました。

本番では、面接官の質問の意図がわからない場面がありました。「あなたの質問はこういうことですか」と英語で聞き直し、質問の真意を確認して答えました。お互いに誤解のない状態で話すことができて、無事に合格しました。

人と人とのやりとりで、質問を確認し直すのは自然なこと。英検も「かっこいい英語」を披露する大会ではないんですね。コミュニケーションの根本を大切にしました。

キャリア広げる始点

英検1級の取得は、自分の中にホームベースができたようでした。ここを始点に、さらに自分の興味やキャリアを広げていける。一生ものの資格だと思っています。

出演するラジオ番組『ニュースで学ぶ「現代英語」』では、リスナーのみなさんの隣に机を並べて、一緒に学ぶ立ち位置を心がけています。例えば、受験に関する話題を取り上げた時に「『第1志望』って英語でなんていうんだろう」とふと思いました。英訳を聞いてみると、「my first choice」。日本語だと難しく考えがちなことも、英語だとシンプルだったりもする。そんな外国語のおもしろさも放送に盛り込みたいと思います。

英語は「自分の未来を楽しくするアプリ」だと思うのはどうでしょうか。英語を使えると、あらゆる楽しいことにアクセスできます。Kポップに関することだって英語の記事が多いです。それをとっかかりに、楽しい英語の世界にようこそ、と伝えたいです。

ひでしま・ふみか

1975年生まれ、神奈川県出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。NHKラジオ第2『ニュースで学ぶ「現代英語」』は月~金曜午前9時30分~9時45分に放送。アプリ「らじる★らじる」でも聞き逃し配信されている。

(朝日中高生新聞2024年2月18日号 )