目の前の興味をテーマに

幼いころからピアノを習い、中高は吹奏楽部。将来は音楽の道に進みたいと考えていました。留学を決めたのは、チャンスがあるなら海外で音楽を学びたいと考えたからです。

留学先はエージェントを通して見つけました。ドイツ南西部の音楽大学で、プロの演奏者からファゴットという楽器のレッスンを受け、語学学校でドイツ語を学びました。

留学先でファゴットを教わった先生と河西さん(右) 本人提供

留学の目的は音楽のスキルを伸ばしてグローバルに活躍できるようになること、帰国後に留学の魅力を伝えることでした。そのために、現地では積極的にコミュニケーションをとろうと意識しました。

海外に行くこと自体が初めてで、全てが新鮮でした。レッスンでは姿勢や呼吸法などを教わり、自分が奏でる音色の変化も実感。大きな学びになりました。

帰国後は自分の高校の集会で体験を伝えたり、「トビタテ」のメンバーとイベントを開いたりしました。紆余曲折を経て音楽の道は諦めましたが、留学をきっかけに大学ではドイツ語を専攻。交換留学で再びドイツに渡り、ジェンダー学を学びました。

大学の学びも生かして、現在はIT関連会社で企業のコンサルティング業務をしています。留学していなかったら間違いなく今の自分はありません。大きな目標を持ってコンフォートゾーン(居心地のよい場所)を抜け出すとたくさんの学びが得られる、この経験が一番の学びです。

語学学校では各国の生徒たちとドイツ語を学びました 本人提供

留学は目標を立て、それに向かって努力する機会になります。価値観がいい意味で壊されることもあるでしょう。目の前の興味があることをテーマに留学してみるのもありだと思います。 (構成・正木皓二郎)

トビタテ!留学JAPANとは

 文部科学省が展開する海外留学支援制度。2013年から、企業や団体などからの寄付で返済不要の奨学金を給付しています。連載ではこの制度を利用して海外へ挑戦した人たちの体験談を紹介します。

(朝日中高生新聞2024年9月29日号)