読者から寄せられた学歴や偏差値に関するもやもやについて、教育哲学が専門の九州ルーテル学院大学准教授・岡村健太さんは「そのもやもやした気持ちを大切にしてほしい」と話します。

自分を深掘り、行動する機会に

「高学歴を求められるのがもやもやする」「偏差値が低いと思われるのが不安」――。こうした読者の悩みを読んだ岡村さんは「まず、もやもやがあることが何よりも尊い」と話しました。

もやもやした気持ちを抱えることは楽ではありません。岡村さんは「進路の不安は自然なこと」としたうえで、「自分を鍛え、行動に移すチャンス」だといいます。「疑問や違和感がなければ学びは始まりません。もやもやがある時点でみなさんはすでに成長の途中にあります」

もやもやした気持ちからどんな学びがあるのでしょうか。岡村さんは「自己理解」を例に挙げます。具体的にどんなことに違和感があるのか、その理由はなんだろうか……。自分の素直な気持ちを受け止め、深掘りしてみると「新しい一面に出会える」と考えます。

白黒つけず広い視野で考えよう

もやもやを解消したい人に、岡村さんは「安易に結論を出そうとせず、多様な意見に触れること」をすすめます。「いろいろな情報を集めれば自分の意見はアップデートされていきます。違う立場の人と話したり、反対意見を調べたりして、広い視野で考えてほしいです」

大切なのは「自分の確信は明日には変わっているかもしれないという余白を残すこと」。自分の意見は大切にしつつ、新しい情報を受け入れる余地を残すなど、柔軟な姿勢が大事だといいます。

もやもやの原因が親や友達など周囲にある場合は、自分の意見を伝えるのも一つの方法です。「相手はよかれと思って話しているのかもしれません。その気持ちを理解したうえで思いを伝えられるといいですよね」。つらい状況の時は無理をせず、「可能な範囲で距離をとることも必要です」。

もやもやした気持ちは「無理やり白黒つける必要はない」と岡村さん。「はっきりさせる人はまぶしく見えることもありますが、そもそもどの意見にも決め手がないから悩んでいるんです。多少の不安は抱えていていいものだと思います」

大学入学共通テストの試験会場で開門を待つ受験生=1月、東京都文京区 ©朝日新聞社

岡村さんが読者のもやもやに答えます!

親の願いも受け入れつつ、自分の思いを

Q 両親が高学歴を求めてくるのがもやもやします。

A 学歴が全てではないですが、あるに越したことはないというのが私の考えです。親御さんの願いも受け入れつつ、やりたいことが見つかった時には、その思いをちゃんと伝えてほしいと思いますね。

Q 志望校を探す時に同じ学部でも偏差値の高い学校ばかり見てしまいます。

A 全然いいと思うんですけど、偏差値の高い学校ばかりを見なくてもやっぱりいいわけですよね。偏差値が高いほど良い先生が必ずいるわけでもありません。学びたい分野で、どこにどんな先生がいるか調べるのも一つの方法。オープンキャンパスへの参加をおすすめします。

Q 学歴で全てを決めつけてしまう社会ってなんか違うと思います。

A そんな社会は私も嫌ですが、そこまでひどくないとも思います。もちろん、学歴があるほうが有利な場面はあると思います。ただ、例えば大学の教員になるために高学歴は必須ではありません。高学歴がないため道が閉ざされることは実は少ないかもしれません。

Q 受験で第1志望に落ちたのですが、今の高校は楽しいです。なのに、かわいそうな人と見られます。

A もやもやを自分で受け止めて、高校生活を充実したものにできていることがすばらしいです。そういうことを言う人がいれば、「今とても良い日々を過ごせているんだ」と伝えてみるのはどうでしょうか。

(朝日中高生新聞2024年12月15日号)

朝日中高生新聞は週1回おうちに届きます!
デジタル版は初回申し込み1か月無料!今すぐ読めます!

朝日中高生新聞は、忙しい中学生、高校生のために主要なニュースを週1回お届け。定期テストや調べ学習にも最適です。進路などお悩み相談やここでしか読めない漫画も。学校や塾では学べない知識が身につきます。

紙面版「朝日中高生新聞」は、日曜日発行/20~24ページのボリュームでご自宅にお届けします。デジタル版「朝中高プラス」は朝日中高生新聞のデジタル版で、週1回配信。デジタル版はバックナンバーも読めます!