「青春の街」で会社設立 25歳の誕生日に発表

――「YX factory」の設立を発表した11月15日は、髙橋さんの25歳の誕生日でした。なぜ会社を立ち上げることにしたのですか?

髙橋優斗さん(以下、髙橋) これまでの仕事に区切りをつけようと、自分自身を見つめ直した時、「強いオーナーシップを持って、突き抜けた挑戦をしたい」と思ったからです。オーナーシップとは、いろんな課題を自分事として捉え、能動的に、わくわくしながら取り組んでいく姿勢だと認識しています。

――起業にはいつごろから興味を抱いていたのでしょうか?

髙橋 以前から、漠然とした憧れがありました。仕事で会った起業家の方を「キラキラしているな」と思ったこともあります。僕はアイドルという仕事にものすごく誇りを持っていましたが、「いつか求められなくなるのかな」という不安もあり、ぼんやり「40、50歳くらいで起業したいな」と。趣味程度ですが勉強もしていたんです。

ただ当時は、このタイミングで挑戦するとは、1ミリも考えていませんでした。25歳という人生の転換期を迎えたことと、さまざまな要因が重なって、今このタイミングになりました。

――起業することを周囲に伝えたときは驚かれましたか?

髙橋 みんなが「いいね」と肯定してくれたわけではなく、本当にいろんな意見をいただきました。真剣に取り組んできたこれまでのキャリアを手放し、初めてのことに挑戦するわけですから、心配の声もありました。僕自身、新しい世界に飛び込むのは怖かった。考えすぎて、精神面からくる高熱を何度も出したこともありました。簡単な決断ではなかったです。

――それでも、会社を立ち上げたのは、地元である横浜を盛り上げたいという気持ちが強かったからですか?

髙橋 横浜に熱い思いがあります。これまで生活の拠点としていた東京もいい街ですが、横浜は僕にとって「青春の街」であり、「心の余裕を生む街」。いっぱいいっぱいになって横浜に帰ったとき、赤レンガ倉庫のベンチに座って向かいの大さん橋を見ていたら、すごくリラックスできたんです。港町特有の緩やかな空気が流れ、安心感があって……大好きな街です。

横浜バニラ制作やチームづくり、YouTube配信などドタバタな日々

――起業は、やはり大変なことが多いですか?

髙橋 すべてが大変、すべてが難しい! これまでのキャリアでは、いろんな準備をしていただいた上で、「最終ゴールをきっちり決めること」が、自分の役割だと思っていました。準備の過程で起こっていることは、ある程度わかっているつもりだったし、関わってくれた人たちをリスペクトしていました。でも、会社のすべてのことに携わるようになった今、想像の100倍きついです(笑)。

――具体的には、どんなことですか?

髙橋 YX factoryは、ミッションに「YX factoryが生み出す『美味しい!楽しい!嬉しい!』を世界へ贈り届ける。」、ビジョンに「挑戦者が集い、語り、協力し、新たなプレミアム体験を生み出し続ける『幸せ製造最強チーム』となる。」を掲げています。そういった一つひとつのことを決めるのにも、何回もディスカッションしてブラッシュアップしますし、ものすごく時間がかかります。

YouTubeチャンネルでの生配信も大変でした。VTR製作一つをとっても、自らスケジュール調整を行い、何度もロケハンをし、どのタイミングで何を撮るのかを考えて、一つひとつに意味を込めて画づくりをしました。さまざまな分野の人たちに、時には無理をして作業していただいて、それをチェックして……全工程に携わりました。でも、生配信開始ギリギリまで準備が終わらないし、もうドタバタ。

一緒に働いているみんなもピリピリしてきて、疲れているのがわかるんです。自分も「今日は体がきついな」と思っても、「……とりあえず栄養ドリンク飲むか!」と準備を進め、ようやく生配信を迎えました。終わった瞬間の達成感は、初めての感覚でした。これまでの仕事で得た達成感とはまた違う種類のもので、忘れられないです。

――生配信では、緊張しているように見えました。

髙橋 すごく緊張しました。応援してくださる方に、自分の選んだ道をちゃんとお伝えしたいという気持ちがありました。その第1弾が、あの生配信だったんです。終わったとき、冗談抜きで「はぁ~!」と倒れ込みそうになり、プレッシャーを感じていたんだなぁと気づきました。応援してくださる方に、どんなふうに捉えられるのかという怖さもありました。いろんな思いがごちゃごちゃになって、緊張したのだと思います。

自分が進んだ道を「正解」に

――事務所をやめてから、1カ月半での再スタートとあって、“爆進”している印象です。原動力は何でしょう?

髙橋 「結局、一歩踏み出してしまったら、もう行くしかない」という思いです。一歩踏み出してしまったら、もう戻れない。行かなきゃダメなんです。そして、自分が選んだ道をちゃんと正解にしたいとも感じています。

「横浜バニラ」は横浜の新たな定番スイーツにしたいです。今日も試作品を食べましたけど、めっちゃおいしいですよ。スタートアップは実情があまり見えないと思うので、その過程も含めて発信して、見てもらえたらな、とも思っています。

――中高生に向けて、メッセージをお願いします。

髙橋 挑戦するって、怖いんです。それに、必ずしもしなければいけないものでもありません。でも、挑戦したいという気持ちがあるなら、あきらめないでほしいです。

いま、中高生のみなさんは勉強をがんばっていますよね。僕は高校生のころから、歌やダンスが中心の生活で、学校にはまともに通っていないし、学校で教わる知識は中学でほぼストップしているんです。

そんな僕が起業するというのは、「夢を見ている」と感じるかもしれません。でも、そんなやつが本気になったら、どんな未来が開けるのか見ていてほしいです。こういうパターンもあるんだと知ってほしい。挑戦する中高生の希望になれればいいなと思います。

髙橋優斗(たかはし・ゆうと)

1999年、神奈川県横浜市生まれ。2015年から芸能事務所に所属し、テレビや舞台、コンサートなどで幅広く活動。24年に芸能事務所を退所し、横浜市にYX factory株式会社を設立、CEOに就任。

(朝日中高生新聞2025年1月1日号掲載インタビューの詳細版)