今後は、世界の環境問題の現状を知ってもらうような発信もできたら、と夢を語るISSEIさん=3月

TikTokのフォロワーは1200万人超、ユーチューブのチャンネル登録者数も5500万人を超えるISSEIさんは、日本人で有数の影響力を持つインフルエンサーです。言葉を使わずに動作やリアクションなどで笑いを取る「非言語コメディー系」のネタを中心に投稿を始め、現在は、自分の日常や好きなことを表現する動画版ブログ「ブイログ」や、「やってみた系」「あるある系」、視聴者にメッセージを伝えるストーリー動画まで、発信の幅を広げています。

「いろいろ作りますが、『非言語』という点で一貫しています。言葉に頼らない表現であれば、海外の人にも伝わります。最初から海外ウケを狙っていたわけではありませんが、発信を始めるにあたり、外国の方の動画を参考にしたことが大きかったと思います。それがたまたま『非言語』のコンテンツだったんです」

子どもの頃から「有名になること」が夢だったというISSEIさんの動画は、海外も含めてファンを獲得していきました。

「TikTokが世に出た時、僕は高校生。当初は嫌われがちなプラットフォームでした。でも、僕はその頃からショート動画に大きな魅力を感じ、見ていました。そのうち、何の根拠もなく『いついつまでにフォロワー〇〇人を達成する!』と周りに宣言し始めて、気がつけば発信する側になっていました」

その際、メインの場にしたのがTikTokでした。当時からユーチューバーは大勢いましたが、TikTokはまだ成熟していないプラットフォームで、投稿内容も現在ほど高度ではなかったといいます。

「ここならやれるかも、と思いました。で、見よう見まねで制作を開始。『とりあえずやってみようぜ』っていう精神でずっとやってきました」

社会のために使う道を模索中

初期の頃から、視聴者からのコメントを大切にしてきました。「どんな動画がウケるのか」といった分析を行うヒントになるからです。コメントを参考に、ウケる動画だけを集中的に投稿する技術を育てていきました。

当初は時間がかかった動画制作も、現在は企画から完成まで8~10時間ほどだといいます。今はチームを組んで動画の企画・制作にあたっています。

「今は自分の力を、人や社会のために使う道を模索しています。以前『いじめを受けていて苦しいけど、ISSEIの動画を見ると幸せな気持ちになれる』ってコメントがあって、自らの価値を再発見しました。ポジティブな影響を与えていけたらと思っています」

あゆみ

東京都生まれ

■ 小学校時代
 活発で、目立ちたがり屋だった。運動会では応援団を務め、学芸会ではいい役を取りたくて積極的に前に出ていた。人を笑わせることが楽しいと知った

■ 中学校時代
 勉強はあまり得意ではなかったが、公式などを使う「数学」や、文法などを使う「英語」はパズルのような感覚で「楽しかった」という。部活は野球部

■ 高校時代
 高校も野球部に所属したが、重大な脊椎疾患を発症。その後はマネジャーのような立場でチームを支えた。そんな中、TikTokに出合った

■ 大学時代
 進学したが、2019年に発信を開始してからはTikTokだけに熱中。俳優を目指しダンスやボイストレーニングにも取り組んでいたが、「自ら発信して自ら仕事を獲得する」働き方に魅力を感じ、インフルエンサーに絞った

■ 2022年
 TikTokのフォロワー数が1000万人に到達

なりたい人へ

まず発信し改善を継続

インフルエンサーの定義にもよりますが、僕は現在、動画内の広告や、企業からのPRの依頼に応えることで収益を得ています。

発信で稼げるようになりたいならば、まずは「とにかく発信」してほしいです。試行錯誤はその後にすればいい。あれこれ考えると逆に行動に移れなくなるので、まずは始めることが大事。その上で周りの意見やコメントに耳を傾けて、「改善を継続」していくといいと思います。

必須アイテム

一眼レフカメラ

端末や動画編集ソフトの性能が高まり、スマートフォン一つで制作・発信まで完結できる時代ですが、「少しでもクオリティーの高いものを」と考え、高精度の一眼レフカメラを多用しています。

業界あるある

「もうかってる」の質問

「インフルエンサーってもうかってるんでしょ?」とよく言われます。具体的な収入は……内緒です(笑)。でも、ネットに出ているような高額収入ではないですよ。あれは何をもとにした予測なんですかね?

やっぱり簡単にもうけられる世界ではないですよね。僕も日々、挑戦しています。ただ、発信が嫌になったことはなくて、低評価がついて中傷されても、「いつかこの人も応援してくれるようになる」と信じて、続けています。

(朝日中高生新聞2025年3月30日号)