
先制攻撃でイランの体制転換図る?
イスラエルは13日未明、イランの核関連施設や首都テヘランの軍事施設などを戦闘機などで攻撃し、イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」の最高幹部らを殺害した。イランも数百発の弾道ミサイルや無人機で報復。2千キロほどの距離を隔てた両国は、事実上の交戦状態に入った。イラン保健省は15日、交戦開始以降に224人が亡くなり、9割以上が民間人だったと発表。イスラエル側でも死傷者が増えている。

2023年10月に始まったパレスチナ自治区ガザでの戦闘で、イスラエルのネタニヤフ首相は、イランが「(イスラム組織の)ハマスとその支援勢力の親玉だ」と繰り返してきた。昨年4月と10月にはイスラエルとイランが互いの領土をミサイルや無人機で攻撃。その間にイスラエルは、イランが支援するハマスと、レバノンの親イラン組織ヒズボラの幹部を相次いで殺害した。
先制攻撃の理由についてネタニヤフ首相はイランの核開発を挙げ、「イスラエルの存続に関わる差し迫った脅威」と説明した。イスラエルを支援する米国は4月から、トランプ米大統領が主導するかたちでイランと核問題に関する高官の協議を開始。15日にも6回目の協議が予定されていたが、今回の攻撃で中止となった。
ロイター通信などは15日、イスラエルがイランの最高指導者ハメネイ師の殺害を画策したと報道。ネタニヤフ首相も否定しなかった。17日にはトランプ大統領がSNSで、ハメネイ師に対して「無条件降伏」を要求。対するハメネイ師が演説などで徹底抗戦の姿勢を示すと、トランプ大統領は米軍の参戦をちらつかせ始めた。
日本の外務省はイラン全土に退避勧告を発出。防衛省はイスラエルとイランにいる日本人の退避に向け、自衛隊機の派遣命令を出した。
ホルムズ海峡封鎖なら日本に影響
日本は輸入原油の9割超を中東に依存。大半がイランとアラビア半島の間のホルムズ海峡を経由する。日本国内には約240日分の石油の備蓄があるものの、イランが「エネルギー供給の大動脈」とされるホルムズ海峡の封鎖に踏み切れば、原油価格などへの影響は避けられない。

火力発電や都市ガスに使われる液化天然ガス(LNG)の多くは輸入価格が原油相場と連動しているため、電気代やガス代も上がる可能性がある。石破茂首相は19日、ガソリン価格が高騰する事態に備えると表明。現在政府が行う1リットルあたり最大10円の補助金に加え、価格が上昇した場合でも1リットルあたり175円程度を上回らないようにする方針だ。
イランの核開発
イランは1979年の「イスラム革命」で国の体制が変わった後、核開発を秘密裏に進めてきた。2002年に発覚し、06年には国連安全保障理事会が制裁措置を採択。各国による経済制裁が続いた結果、イランが核開発を制限する代わりに制裁を緩める「核合意」を15年に米国、中国、ロシアなど6カ国と結んだ。しかし、18年に米国のトランプ政権がこの合意から一方的に離脱。イランは核開発につながるウラン濃縮などの活動を強化した。
(朝日中高生新聞2025年6月22日号)