
Runway(1)
「自分が憧れる人物ではあるかな、と思います」。ドラマや映画界の第一線を走り続ける俳優が憧れる人物は、まさに自身が演じる「チーフドクター」だ。
8月公開の劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』。ドラマ版が放送されたのは2021年だった。手術室を搭載した大型車両(ERカー)で事故や災害現場に駆けつけ、患者の命を救うため自らの危険を顧みずに戦う、東京都知事直轄の救命医療チーム「TOKYO MER」。その活躍を描く作品で、主人公のチーフドクター・喜多見幸太を演じた。

メンバーに「こうしろ」と強要はしない、自分の背中を見せる、厳しいけれどいつもニコニコしている、チームとして最高のパフォーマンスが出せるよう導いていく――。喜多見はそんな人物だ。「僕はこんなに頼りがいはないし、追い込まれたら喜多見のように体は動かないですけど(笑)」、自分にだいぶ引き寄せた役でもある。
事故や大災害で多数の傷病者が出た場合、緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決定する「トリアージ」。医師にその仕方を見せてもらった時、手はものすごいスピードで動いているのに、傷病者に対しては想像よりはるかに優しく、穏やかに接していた。緊迫したドラマをつくるため、医師役の俳優にも緊迫したしゃべり方をさせることがある。でも、本当はそうじゃない。演じる時は「目の前の傷病者を安心させること」を心がけた。
西郷隆盛から超一流のスイーパー(始末屋)、高校野球部の監督、妹思いの兄など、これまでいろいろな役を演じてきて思うのは「どんな人にも、その人にしかない良さがある」ということ。それは、作品の役だけでなく全ての人に言える。もちろんあなたにもあると、中高生に伝えたい。
(関田友衣)
鈴木亮平(すずき・りょうへい)

1983年生まれ。兵庫県出身。NHK大河ドラマ『西郷どん』で主人公・西郷隆盛を演じるなど、俳優として活躍。劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』は8月1日全国東宝系でロードショー。
Runway 未来へ飛び立つ君たちへ

中高生時代は未来への「滑走路」。各界の「花道」をゆく人が4週連続で登場し、エールを送ります。
(朝日中高生新聞2025年6月29日号)

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