若い人の代表がいる社会に

選挙や社会問題に発信 「NO YOUTH NO JAPAN」の能條桃子さん

 政治や社会を「知って、スタンスを持って、行動する」若い世代を増やそうと活動する団体「NO YOUTH NO JAPAN」の代表理事、能條桃子さん(27歳)に聞きました。

立候補年齢引き下げを訴え/声を上げよう
低さ目立つ10代、20代の投票率

「18歳選挙権」が契機
 2016年に投票できる選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた時、ちょうど18歳だった能條さん。「周りの同世代を含め、みんなが投票に行っているわけではないんだ」と気づき、問題意識を持ち始めたといいます。

朝日新聞社

大学在学中の21歳で、若い世代の投票率が高い北欧のデンマークに留学。「そこでは同い年で選挙の候補者や議員になっている人がいて、10代前半の人も政治活動に参加していました」。日本で見たことがない光景を目の当たりにし、「日本でも若い人の政治参加を当たり前にして、その声が届く社会になれば」と、留学中の19年に「NO YOUTH NO JAPAN」を立ち上げました。

立候補年齢に関する裁判について記者会見で話す能條さん(左から3人目)=2023年7月、東京都港区 朝日新聞社

現在は選挙や社会問題について、SNSなどで分かりやすく発信しています。中でも力を入れるのは、選挙に立候補できる年齢を、投票できる年齢と同じ18歳以上に下げようと訴える活動。「若い人の投票率が低い理由を、社会全体が若い人のせいにしてきた面が大きいと思う。投票に行こうと呼びかけても、投票先に自分の代表だと思える人がいなかったら、行こうと思えない」。若い政治家が生まれることで、政策でも新しい論点が生まれると考えています。

「社会でおかしいと思うことがあれば署名活動をするなど、選挙以外にも伝える方法はある。声を上げてみたら変わることもあるということを伝えたいです」

女性議員増に比例制
 女性議員がなかなか増えないのが課題の日本。読者からは「新しい選挙の方法はないの?」というもやもやが。能條さんは「今はいろいろな仕組みを組み合わせた制度だが、もう少し比例制を増やすべき」と提案します。

1人しか当選しない小選挙区制では、多数派をとらなければ当選できません。そのため候補者は、みんなが反対しない無難なことを訴えがちになります。そして1人しか選ばれないとなると、男性や中高年が当選しやすくなるのではと能條さんは推測します。

「その地域に住む人の中で支持者は10%しかいないかもしれないけれど、全国で合わせたら結構な数になる主張もあると思う。比例制を増やせば、いろいろな意見が反映されやすくなるのでは」

比例制を増やして期待できる効果はほかにも。「比例制では政党に投票するという考え方になるので、政党としては長期的に自分たちの党が勝ち続けなければいけないと考えるようになる。すると候補者を決める段階で、年齢や性別などのバランスを意識し始めるはずです」

去年、初投票した大学生は

生活関連から注目してみて

元特派員の堀川将英さん

 元朝中高特派員の堀川将英さん(成城大学法学部2年)に、政治や選挙を知る一歩の踏み出し方を聞きました。

堀川さんが初めて投票したのは、去年10月の衆議院議員選挙。自民党の派閥による「政治資金問題」が明らかになってから初の国政選挙で、結果的に自民党と公明党が少数与党になりました。

「自分の一票で何かが大きく変わるわけではない。そう思う一方、投票することの大切さを実感しました。選挙特番で得票数を見ながら、自分の一票もここに入っているのだなと思っていました」

政治や選挙について知りたいなら、生活に関係する点に注目するといいのではと堀川さん。「参院選では自民党などが公約として『給付金』を掲げています。一方で、減税を掲げる政党も。お金の問題は中高生の生活にもつながるので、気になる人も多いのでは」。各党や候補者すべてを把握するのはなかなか難しいので、注目すべきポイントをまず決め、それぞれの党の考えをみるのも手だといいます。

もやもやに回答!

 今回取材した識者3人に、読者からの政治に関するもやもやについて答えてもらいました。

意見が合う候補者を探せるサービスも

Q 初めて投票する時、どんなことを参考にすればいい?

A(能條桃子さん) 投票先を決めるのに、一つの正しい答えがあるわけではありません。全てを知らないと投票できないと思わなくていい。その上で「変わってほしい」「どうにかならないの」と思っていることに、どの党や候補者が一番前向きに取り組んでいるかを見て決めたらいいのではないでしょうか。

新聞やテレビなどで紹介される争点を手掛かりにしたり、討論会を見たりするほか、自分の意見と一致する政党や候補者を探せる「ボートマッチ」のサービスを使うのもおすすめです。

記者からひとこと

 複数の情報源を持ち、「こうなったらいいな」を実現してくれる、自分の「分身」を見つける――。今回、中高生向けにもらった回答は、有権者8年目の私にも気づきが多かったです。もやもや募集へのご協力、ありがとうございました!(大井朝加)

(朝日中高生新聞2025年7月6日号)

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