
若年層の政治意識など研究する 秦正樹さん
若年層の政治意識や投票行動を研究テーマの一つとする、大阪経済大学准教授の秦正樹さん。若い世代の政治に対する反応に、気になるところがあるそうです。
秦さんが最近、学生からよく聞く言葉があります。それは「思想が強い」です。「政治に対して強い意見を言ったり、支持政党があったりする人は『思想が強い』。そういう人は面倒くさいし、うざいという感覚があるようです」
学生から支持する政党や政治家を聞かれても、「ない」と答えているという秦さん。すると「先生は中立で思想が強くないから、講義を聞いていて楽です」と感想をもらうことがあるそうです。
「政治というのはけんかするもの、A党派とB党派が罵り合うものと思っているのかも。そして支持政党を持つ『思想が強い』人は、『けんかっ早い』と感じているのではないでしょうか」
そう感じる背景には、SNSで政治について激しく言い争う人が目につきやすくなったこともあるのではと秦さん。ただ支持政党を持つ人全てがそうした言動をするわけでなく、「ごく一部」だそうです。
「そもそも日本人の6~7割が支持政党を持っていて、むしろ持たない人のほうが少ないという調査結果もあります。6~7割の人が日本社会で暴れているかというと、そんなことないですよね。SNSの一部だけを見て、政治に触れたくないとなるのはもったいない」
投票するときは「この政党、この政治家が絶対にいい」という確固たる思いを持たなければいけない、そうでなければ選挙に行けない――。そう思っている人もいるかもしれません。秦さんによると、若者向けにしきりに「一票の重み」を啓発したことで、真面目に選挙を考えている人ほど、むしろ投票率が下がったといいます。
投票は「すごくあっさり」 激変はなさそうだけど…
「中高生は驚くかもしれませんが、日本における『投票』はすごくあっさりしています。投票所でみんな静かに投票用紙に名前を書き、箱に入れたら終わり。『あんなに頑張って考えたのに?』と拍子抜けするほどです」
日本ではこれまで、1回の選挙で政治が激変するようなことはほとんどなく、海外ではよくある政党間の政権交代も数えるほど。トランプ氏が大統領に就任した後の米国のようなことにはなりにくいといいます。
「衆議院は今、少数与党になっていますが、それでもやはり自民党の影響力は大きい。あなたの一票が仮に間違った判断だとしても、大きく政治は変わらない、そもそも変わってしまったらそれは独裁なのです。でも、そのことは選挙に行ってみないとわからないとも言えますね」
もやもやに回答!
Q 支持政党を口に出すのはNG?
A(秦正樹さん) いけないわけではないですが、世間的には「人間関係がおかしくなるリスクがある」と認識されています。推し活でも、自分の推しが「一番売れている」と口にして、実は友達がライバルを推していたとなると、気まずいですよね。それと似たようなことです。
Q 政治家が筋のある主義や主張をしているのに、SNSで小ばかにしたような紹介をされて納得いかないことがあります。
A(秦さん) 政治家は小ばかにされているのも分かった上で、信念を持ち、活動していると思います。応援する政治家への批判に対し、自分が批判されたように感じると、しんどくなってしまうので、自分でその思いにブレーキを踏んだ方がいいかも。でも自分と反対の意見もちゃんと見ているのは偉い!
(朝日中高生新聞2025年7月6日号)

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