衆参ともに少数与党に転落

125議席が争われた参議院議員選挙が7月20日、投開票された。連立政権を担う与党の自民党と公明党は「参議院全体で、与党で過半数維持」を必達目標に掲げたが、改選前の66議席(自民52、公明14)から大きく減らし、計47議席にとどまる大敗。今回選挙をしなかった非改選の75議席を合わせ、過半数(125議席)を割り込んだ。
与党は今回、全国に32ある改選数1の「1人区」で野党などに対し、14勝18敗と苦戦。比例区でも政党別の得票率で自民党が21.64%と、比例代表制が導入された1983年以降で最低だった。
与党にとっては石破茂首相の就任直後に行われた去年10月の衆議院議員選挙に続く敗北で、参議院でも議席の過半数に届かない「少数与党」に転落。自民党を中心とした政権が衆参ともに過半数を割り込むのは、1955年に自民党が結党して以来、初めてのことだ。

この結果を受けて石破首相は自民党総裁として21日、記者会見を開催。「極めて厳しい、国民の審判をいただいた」としながらも、「政治を停滞させないよう、(政党別で最も議席が多い)比較第1党としての責任、国家国民に対する責任を果たしていかねばならない」と、続投する考えを明らかにした。
石破首相はこれまで、自民党の政権が選挙で敗れた際、時の首相にけじめとして、公然と退陣を求めてきた過去がある。会見でこの点を指摘されると、「総裁が続投するならば、なぜなのかと説明し、国民の広い理解をいただくことが必要だと申し上げた」と振り返り、「今、そのことを思い起こしながら発言している」と、歯切れの悪さが目立った。
首相の決断をめぐっては、自民党所属の国会議員や党の地方組織などから、参院選で大敗した責任をとって退陣を求める声が次々と上がった。そんなさなかの23日、石破首相は自民党本部の総裁室で麻生太郎元首相、菅義偉元首相、岸田文雄前首相の3氏と会談。現職首相が歴代首相と一堂に会するのは極めて異例で、注目が集まった。1時間20分にわたる会談後、石破首相は記者団に「私の出処進退については一切話は出ていない」と述べ、「党の分裂は決してあってはならない」と結束を訴えた。
投票率は15年ぶりの高水準
総務省は21日、今回の参院選の選挙区での投票率が58.51%だったと発表した。前回の2022年参院選の52.05%から6.46㌽上昇した。50%台後半となったのは10年の参院選以来、15年ぶり。都道府県別で最も高かったのは山形県の62.55%で、最低だったのは徳島県の50.48%だった。
女性の当選者は42人(選挙区27人、比例区15人)で、全当選者に占める割合は33.6%。人数と割合のいずれも過去最高だった前回2022年の35人、28.0%を上回った。女性の当選者数の内訳は、立憲民主党が12人と最多で、自民党と参政党が7人、国民民主党が5人などと続いた。
石破茂首相
1957年生まれ、鳥取県出身。慶応大学を経て旧三井銀行に入行。鳥取県知事などを務めた父と親交が深かった田中角栄元首相に背中を押されて政治の道へ進み、1986年衆院選の旧鳥取全県区で29歳で初当選した。
防衛大臣、党の幹事長、地方創生担当大臣などを務め、2015年に派閥を旗揚げ。自民党総裁選挙には08年に初めて出馬し、24年に5度目の挑戦で当選。第102代首相に就任した。
参院選 野党明暗、参政・国民が躍進

7月20日に投開票された参議院議員選挙では、野党の中でも明暗が分かれた。野党第1党の立憲民主党は与党への批判票をじゅうぶん取り込めず、改選前と同じ22議席を維持するにとどまった。一方で、国民民主党や参政党といった新興政党が大きく勢力を伸ばした。AIエンジニアの安野貴博氏が立ち上げた「チームみらい」も、比例代表で初の議席を獲得した。

結党5年の参政党は改選前の1議席から14議席に躍進。「日本人ファースト」を掲げて外国人の流入規制や参政権の付与反対などを唱えたほか、減税や積極財政も訴え、比例区に加え、都市部の選挙区でも議席を獲得した。計11議席を超えたことで、参議院において予算を伴わない法案を単独で提出できるようになった。
神谷宗幣代表らがめざすのは、選挙戦で訴えてきた「スパイ防止法案」の提出。1985年に自民党が議員立法のかたちで関連の法案を提出したことがあるが、個人の「思想・信条の自由」を侵害する恐れがあるなどとして廃案に追い込まれている。

同じく結党5年の国民民主党は比例代表の得票数で、立憲を抑えて野党1位に浮上。改選議席を4倍以上に増やして17議席を獲得した。去年10月の衆議院議員選挙でも4倍増(計28議席)を達成。参議院では非改選の5議席を加えた計22議席となり、予算を伴う法案を単独で提出できるようになった。玉木雄一郎代表は21日、最も優先順位が高い政策として、所得税の課税最低ラインである「年収の壁」の178万円への引き上げと、ガソリンの旧暫定税率の廃止を挙げた。
政党交付金の額も変動
今回の選挙結果を受け、総務省は2025年分の政党交付金(総額で315億3600万円)の各党への交付額を見直す。衆参の国会議員の人数などに基づき決まる仕組みだ。朝日新聞の試算では自民党が交付決定額から4億7700万円減って131億6200万円となる見込み。参政党は3億9800万円増の9億1400万円と大幅に増え、国民民主党も2億5500万円増の22億3400万円となる。チームみらいにも4800万円が交付される。
政党交付金
法律に基づき、国が政党の活動を助けるために配るお金。財源は税金で、直近の人口に250円をかけた額が総額の基準になる。共産党はこの制度に反対して交付を受けていない。
(朝日中高生新聞2025年7月27日号)

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