
8月15日、7年ぶり地上波放送
スタジオジブリのアニメ映画 火垂るの墓
戦後80年を迎えるこの夏、スタジオジブリのアニメ映画『火垂るの墓』に注目が集まっています。7月には国内初の配信が始まり、今月には7年ぶりに地上波での放送が予定されています。東京都港区では、制作の裏側を紹介する展覧会も開かれています。(佐藤美咲)
戦後80年のいま、再注目
国内で配信開始、7年ぶりに地上波放送
1988年に公開された『火垂るの墓』は、太平洋戦争末期の兵庫・神戸市と西宮市が舞台。戦争で両親を失った14歳の清太と4歳の節子のきょうだいが、身を寄せていた叔母の家を出て、2人で懸命に生き抜こうとする姿を描きます。
原作は、作家・野坂昭如さん(1930~2015年)が太平洋戦争における神戸空襲の体験をモチーフに書いた同名の短編小説。妹を亡くした自らの戦争体験を盛りこみ、1968年に直木賞を受賞しました。
アニメ映画は去年9月から、動画配信サービス「ネットフリックス」で、日本を除いた190以上の国や地域で配信。去年5月のカンヌ国際映画祭で、火垂るの墓の試写会やPRブースを開いたところ、参加者から好評だったのがきっかけといいます。
配信開始1週間で、非英語映画の世界ランキング7位に。英語圏のレビューサイトでは「二度と見たくない傑作」「ウクライナやガザの状況と重なる」などと反響を呼びました。
配信を望む声が上がっていた国内では、今年7月15日から配信が開始。ジブリ作品として国内初の配信作となったことでも、話題になりました。
地上波では「金曜ロードショー」(日本テレビ系)で、監督を務めた高畑勲さんの追悼として2018年に放送されたのが最後でしたが、今年、終戦の日にあたる8月15日に放送されます。
空襲の中、幼い兄・妹が懸命に生きる
生誕90年・高畑勲さんの展覧会(東京)
ラストシーンを脚色 想像力を養う物語に
生誕90年を迎える高畑さんの足跡を振り返る展覧会「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」では、火垂るの墓のコーナーが大きな目玉の一つになっています。
高畑さんは同作で脚本も担当。会場には、原作小説のコピーをノートに切り貼りし、シナリオのメモ書きを添えていた「脚本準備ノート」など、貴重な資料が並びます。

「主人公である清太に、現在の子どもを重ね合わせ、未来に起こるかもしれない戦争に対する想像力を養う物語に仕立て直すことを狙いとしていた」ことも紹介。幽霊となったきょうだいが現在の日本を見つめるラストシーンは、原作にはない演出でした。
6月26日のオープニングセレモニーでは、高畑さんのファンで、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんと、高畑さんの遠い親戚にあたるという映画監督の岩井俊二さんが登場。岩井さんは「(清太と節子が大事にしていた)サクマ式ドロップスの缶を、何も知らない駅員さんが野球のフォームで投げる。あの残酷な演出は強烈でした」と振り返りました。
公開当時、高畑さんは「戦争反対の映画ではない」とコメントしていました。これについて太田さんは「戦争反対という言葉の中に、この作品を閉じ込めてほしくないという思いがあったのではないか。いま私たちに改めて問い直されているような気がする」と話していました。

展覧会情報
「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」

会期:9月15日まで
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー(東京都港区)
入場料:4歳~中学生1400円、高校生・専門・大学生1700円、一般2千円
(朝日中高生新聞2025年8月3日号)

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