
「卵を食べると体がかゆくなる」など、特定の食品を食べると症状がでる「食物アレルギー」。クラスに1~2人くらいの割合でいるといわれています。近年では、クルミやカシューナッツなどの「木の実類」の食物アレルギーが増えています。食物アレルギーについて、小学生が知っておきたいことを専門家に聞きました。
健康食品ブームの影響? 給食にも出る
日本人に多い食物アレルギーの原因は、これまでは多い順に「卵」「牛乳」「小麦」でした。消費者庁が2021年度に行った最新の実態調査ではじめて、クルミやカシューナッツなどの「木の実類」が、小麦をぬいて第3位になりました。
食物アレルギーが専門で、食物アレルギーの実態調査に20年近くかかわってきた、国立病院機構相模原病院の海老澤元宏さんは「木の実類のアレルギーはこの10年くらいで急激に増えた」と話します。
「原因はわかっていませんが、健康食品ブームの影響で、木の実類を食べる機会が増えたことが関係しているのではないかと考えられます」。学校給食でも、食育の一環として積極的に木の実類を献立に取り入れる傾向があるそうです。
海老澤さんは「食物アレルギーは赤ちゃんの時に気付くことが多いですが、小学生で初めて症状が出る人もいます。もし、ある食べ物を食べた後に同じ症状が出ることが続くなら、病院で調べてもらいましょう」とすすめます。
アレルギーの症状はなぜ起こるのでしょうか。
私たちの体は「免疫」で守られています。免疫は、細菌やウイルスなど体によくないものが入ってきたら、たたかって体から取りのぞこうとする仕組みです。ところが、本来は体に害がないはずの食べ物や花粉、ほこりなどをまちがえて敵とみなし、攻撃してしまうことがあります。これがアレルギー反応です。
食物アレルギーが起こると、体がかゆくなる、目や口がはれるなどさまざまな症状が出ます。軽い症状ですむ人から、命にかかわるような強い症状が出る人まで、症状の重さは人により違います。
子どもだけの判断でおかしを交換するのはダメ
放課後に友だちと遊ぶ時などに、おかしの交換をすることがあるかもしれません。食物アレルギーの知識を広める活動をしているNPO法人ピアサポートF.A.cafeの服部佳苗さんは「子どもだけの判断で、友だち同士でおかしを交換するのは絶対にやめてほしい」と呼びかけます。「重い食物アレルギーの子は、ほんの少し口にしただけで、命の危険がある強いアレルギー症状が出ることもあるからです。以前は食べて安全だったおかしも、知らない間に原材料が変わっていることもあります。注意が必要です」
アレルギーのある子の中には「友だちがせっかくくれたおかしを断るのがつらい」と感じる人も少なくないといいます。服部さんは「食物アレルギーに限らず、病気や障がいなど、人にはそれぞれ事情があります。それをおたがいが理解できれば、支え合える関係になれることを学んでほしい」と話します。

原材料の表示にクルミも
食物アレルギーがある人にとって、食品にどんな原材料が使われているか知ることはとても大切です。現在、食物アレルギーを引き起こすおそれのある食品のうち「卵、牛乳、小麦、そば、落花生、エビ、カニ」の七つは法律で、加工食品の材料に使った場合は必ずその名前を表示しなければならないと決まっています。消費者庁はこの七つに、木の実類で特にアレルギー症状の多い「クルミ」も、今年度中に加える方針です。

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