外国の通貨に比べ、日本の円の価値が下がる「円安」が春から急速に進みました。海外から輸入するものの値段が上がるなど、生活に影響が出ています。歴史をさかのぼると、逆に「円高」で大変だった時期も。こうしたことが起きる「外国為替市場」のしくみを解説します。(松村大行)

売り買いで価値動く

円のような通貨も、他のものと同じように売り買いされます。売り買いする場を外国為替市場と呼びます。売り買いが積み重なった結果、1ドル=〇円という交換の「相場」が決まります。

円と他の通貨との交換は、海外旅行で現地の通貨が必要なときや、貿易で得た外国の通貨を円にかえるときなどに行います。ただ大部分は、お金もうけが目的の「投資」です。証券会社や保険会社などは1度に億の単位で取引することもあります。

円がたくさん売られる一方、他の通貨が買われる動きがあると、その通貨に対して円の価値が下がる(安くなる)「円安」になります。円がたくさん買われて価値が高まるのが「円高」です。ある時点からの変化を示すので、同じ1ドル=120円も、状況によって円安とも円高ともいわれます。

円安は輸入で不利に

通貨の価値は、同じ額でものがどれほど買えるかで表せます。1ドル=100円から200円と「円安」になれば、それまで100円で買えた「1ドルのジュース」に200円が必要になります。1ドル=50円と「円高」になれば100円で2本買えます。

円安になると、同じものを輸入したときに前より多くしはらわなければならず、店で売る価格も高くなる可能性があります。逆に、現地の通貨で得たもうけを円にかえると額がふくらむため、輸出には有利です。

円の相場はかつて1ドル=360円に定められていました。「固定相場制」といいます。1973年から、市場の動きで相場が決まる「変動相場制」に変わりました。その後は時代を経るにつれて1ドル200円台から100円台へと円高が進み、2011年には1ドル=75円台を記録しました。

(朝日小学生新聞2022年6月6日付)