「代表者」を無作為に選んで質問

「世論調査」ってそもそも何?

ジャン

江口達也記者 社会的な問題や、政治的な争点・政策などについて、世の中の人々がどのような意見を持っているか調べるものだよ。新聞社などの報道機関のほか、政府なども実施しているよ。

じゃあ、日本に住んでいる人全員に意見を聞いているの?

ケン

――いや、ものすごい手間やお金がかかるから無理だ。世論調査では選挙権を持っている人(有権者)の中から「代表者」を選んで意見を聞いているよ。

その「代表者」って、どう選ばれるの?

ポン

――「無作為」に選ばれているよ。無作為というのは、選ぶ人の意思は一切関係なく、全ての有権者が等しい確率で選ばれるような選び方のことをいうよ。サイコロやくじ引きをイメージしてもらうとわかりやすいかな。無作為に選ぶことによって「有権者の縮図」を作ることができるんだ。この「縮図」の人たちの意見を調べることで、有権者全体の意見分布がだいたいわかるんだよ。

Ⓒ朝日新聞社

なるほど。その代表者って何人くらい選ぶの?

ケン

――実施主体によってちがうんだけど、だいたい千人から3千人くらいだね。朝日新聞の定例世論調査では1500人の回答を得ることを目標にしているよ。

どんな方法で調査しているの?

ケン

――朝日新聞では固定電話と携帯電話の番号を無作為に作って電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式による電話調査のほか、郵便で調査票を送って回答してもらう郵送調査もやっているよ。

Ⓒ朝日新聞社

景気やスポーツもテーマに

世論調査って何のためにやるの?

ジャン

――世論調査には、民主主義を補完する役割がある。国民が政治に意思を反映させる手段として一番大きいのは選挙。だけど時々しかない。ある政策や社会問題について有権者はどう思っているか、調べて政治に届ける役割がある。

世論調査ではどんなことを聞いているの?

ケン

――内閣支持や、政党支持をはじめ、内閣が進めようとしている政策への賛否や評価といった政治に関する質問が多い。景気をどう感じているかなど暮らしに関することや、スポーツについて質問することもあるよ。

さまざまなことを調査しているんだね。

ジャン

――そうだよ。調査の結果をみて、「自分は賛成だけど反対という人もいるんだな」とか、そのテーマについて考えるきっかけにしてもらえるんじゃないかな。

質問はどう決めているの?

ポン

――朝日新聞では、調査担当者が質問案を作って、世論調査部全員が参加する会議にかけるんだ。質問文が一方の意見に誘導するようなものになっていないか、調査対象者に正しく伝わる文章になっているかなど、いろいろな意見を出し合って作るよ。

アメリカが先進国

世論調査は海外でも実施されています。中でも、アメリカ(米国)は世論調査の先進国です。日本でも利用されているRDD方式の電話世論調査は、米国で発明されました。

米国は日本とちがって広大な国。同じ国の中でも時差があるので、現地の時刻に対応できるよう、朝5時から翌朝4時まで23時間も電話をするそうです。また、通じる言葉の種類も多種多様なので、調査によっては110もの言語の通訳を用意することもあります。

■解説者 江口達也(朝日新聞東京本社世論調査部記者)

(朝日小学生新聞2022年10月28日付)