
読者から寄せられた疑問を編集部が調査するコーナーです。今回は小学生3年(愛知県)から寄せられた「大人はなぜ『からい』『苦い』が好き?」という質問に答えます。
小学生3年(愛知県)の疑問
私や、弟と妹(どちらも4歳)は、からい味や苦い味がきらいです。大人はそういう味を好きなことがあるのはどうしてですか? とてもふしぎです。
大阪大学大学院人間科学研究科教授 八十島安伸さんの回答
人間をふくめ、動物は生まれつき、からさや苦み、すっぱさがきらいです。だから子どもがそういう味をきらいなのは当たり前なんです。でもいろいろな味を経験するうちに、人それぞれ変わっていきます。なぜなのか、実はよくわかっていません。
いろんな味を経験して変わっていくから
生き物が本能的にきらう味
質問を送ってくれた方と、オンラインで取材しました。
Q(質問) 八十島さんはどんな研究をしているんですか。
A(八十島さんの答え) 人間や動物が、味を好きになったりきらいになったり、おいしくて食べすぎちゃったり……。なぜそんなことが起こるのかを研究しています。質問者さんはなぜ、からいものや苦いものがきらいなのでしょう。
Q 口がいやな感じがします。
A いやだから、きらいなんだよね。もっと小さい子にとって、からい味や苦い味がいやだというのは、ふつうなんです。学校に動物はいますか。
Q インコとコイがいます。
A コイも、苦い味はペッとはきだしちゃうんだよ。
Q えさじゃないものを食べたときに、はきだしていました。
A よく観察して、ちゃんと覚えているんですね。これからもぜひ続けてください。
人間も同じで、本能的に苦みやすっぱさを「毒があるかも」「くさっているかも」と感じ、きらいます。からさは実は、痛みなんです。だから口から出してしまうのが生物として当然の働きです。
大人だって、小さいころはきらいだったんです。いろんな経験をして好きになることがありますが、人によってちがいます。
きらいなものを好きになるのはなぜなのか、どうやって好きになっていくのかは、まだよくわかっていません。私の研究室では、マウス(ハツカネズミ)が、あまくて苦いビターチョコレートを好きになっていく過程を研究しています。
Q 少しわかっていることはあるんですか。
A コーヒーなど苦いものは、口の中がさっぱりして、後から目がはっきりする、体がシャキッとすることがあります。経験をくり返すと、「もしかしたらこれって、いい感じ」と、好きになるのかもしれないです。
Q すっぱい味を好きになるのはどうですか? お母さんは「夏みかんをサラダに入れるとさっぱりして、おいしい。野菜の青くささが消えて食べやすくなる」といいました。
A 比較するとふつうの野菜よりはおいしいと感じるのかもしれないですね。
お酢はすごくすっぱくて、そのままだと飲めません。でもドレッシングに入れたりして、ほかの味と合うとおいしく感じる。ふしぎですよね。
Q ちょっとすっぱいグミは好きです。
A たくさん食べていたら、「もっとすっぱくてもいいや」と感じて、すっぱい味が好きになるかもしれませんよ。
口の中がさっぱりするといった「いい体験」と、「すっぱい味」が組み合わされると、「すっぱい」が「おいしい」という感覚にずれていく。それを何度もくり返して、じわじわと好きになってくることがあります。
くり返したくなる?「痛み」
Q 炭酸も苦手です。舌がパチパチッとして痛いです。
A 私も小さいころ、コーラを飲むと涙が出ました。何度か経験すると、痛みを感じにくくなり、逆にシュワシュワ感が心地よくなることがあります。
炭酸の刺激は、チクチクした感覚で、からさと似ています。からいと、脳の中で痛みをおさえる物質が出ます。これには気持ちよさがあって、「もう一度」とくり返したくなる。からいものを食べるとそういう意味で「なんだか幸せ」と感じる人がいるんです。
Q きらいな味でも、食べたほうがいいと思いますか?
A 今きらいなものでも、中学生、高校生になったら急に「おいしい」と再発見することがあります。おおらかにとらえるのがいいのではないでしょうか。
一方で、ちょっと食べて「まずいな」と思ってもかまわないので、チャレンジは続けてほしいなと思います。

(構成・岩本尚子)
感想
子どものころに苦手だった食べ物が、ちょっとずつ何回も食べているとだんだん「おいしいかも」と感じて、好きになることがあるということが聞けてよかったです。
私もいろんな味を食べてみて、いつか「おいしい!」と思えたらいいなと思います。ありがとうございました!
(朝日小学生新聞2023年7月4日付)

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