ある6年生の女の子は、母親から
「公立中学ではなく、私立に行ってみる?勉強しないと入れないけれど……」
と、誘導されるように提案され、大手の集団塾に通い始めました。

塾に通えば勉強が出来るようになる……という話でしたが、どうもそう簡単ではないようでした。スピーディな授業、大量の宿題をこなした上の話だったようです。女の子はすぐ嫌気がさし、教室に貼ってあるスローガンを見て笑ったり、寝たり、消しゴムをちぎって飛ばしたりするようになるまで、さして時間はかかりませんでした。押し付けられた勉強が嫌でたまらなかったのです。

本好きにもかかわらず国語はムラがあり、歴史マンガに精通しているわりには社会も得点できず、特殊な解き方を要する算数はとくにネックでした。

見かねた母親は娘のために家庭教師をつけましたが、地味でまじめな先生とそりが合わず、聞きたいことも聞けないような夏が終わりました。また、秋になっても模試は下から数えたほうが早いまま、塾の宿題は答えを写してばかりいると、案の定というか、神風はふかず、入試に落ちました……。

中学受験で志望校に合格しなかった場合、どうなるのでしょうか?

公立中学で、やる気のない教師、やんちゃな生徒や陰湿な生徒などに囲まれて、高校受験もままならず、だから大学受験もパッとしなくて、就職も出来ず、人生は下降していくのでしょうか?

逆に志望校に合格できたからと言って、学校生活も進路もすべてハッピー、とばかり決まっていない事は、親御さまたちもご存知ですよね。

たとえ合格できなかったからといって、子どもの人生が終わるわけでなし、受かったからといって必ずしもうまくいくわけでもない。ただの通過点です。

あつくなっている親御さま、ちょっと肩の力を抜きましょう。中学受験に合格してもそうでなくても勉強は続くのです。まだまだ挽回のチャンスはいくらでもあります。

ちなみの冒頭の少女は、私、筆者です。前述のように中学受験は不合格で公立中学でしたが、ちゃんと大学受験で、かつての中学受験生たちと肩を並べて大学に合格できましたよ。

<提供> 総合進学セミナー

(朝日小学生新聞2023年10月17日付)