山火事の被害を受けたアメリカ・ハワイ州マウイ島ラハイナの市街地。建物は焼けこげ、家具などが散乱していました=2023年8月14日 ©朝日新聞社

「温暖化」こえる時代がきたと国連事務総長が発言

Q 地球の気温はどれくらい上がっている? なぜ?

A 温室効果ガスによって、19世紀から1度以上暑くなっている

解説者 瀧澤美奈子(科学ジャーナリスト)

国際連合(国連)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した第6次報告書によると、世界の2011~20年の平均気温は工業化前(19世紀)と比べて1.09度上がっています。

2023年8月には石川県小松市などで気温が40度をこえました。世界でも、イタリアで48度をこえるなど、最も暑い夏になりました。

国連のグテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が訪れた」と発言。「地球沸騰化」という言葉は日本でも、23年の流行語大賞トップ10に入りました。

暑すぎる夏は、自然現象であるラニーニャ現象などの影響です。しかし、温暖化がなければ約1200年に1度のはずが、温暖化が重なり5年に1度の確率で起きたことが、研究で分かりました。23年は年間を通しても観測史上最も暑い年でした。平年値(2020年までの30年間の平均)を1.29度上回り、温暖化後の世界を先取りしたような年になりました。

温暖化の原因は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスです。これらが人間の活動によって大量に排出され、大気中の濃度が高くなり、地表付近の大気を暖める「温室効果」が起きています。一刻も早く、温室効果ガスの排出を減らす必要があります。

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Q 気候変動で何が起きる?

A 猛暑になったり、強い台風や集中豪雨、干ばつが起きたりする

解説者 瀧澤美奈子(科学ジャーナリスト)

異常気象で、食物や住む場所に困る人や動植物が増えます。これらがすでに起きはじめています。温暖化は単に気温が上がるのではありません。ドミノだおしのように、次々と深刻な影響が後に続きます。気温が上がると大気中の水蒸気が増え、大量の雨が降りやすくなります。一方で、雨の降らない地域では、干ばつや山火事、砂漠化がよりひどくなります。

海の水温が上がり、魚や藻、サンゴなどの生物を脅かしています。海面も上がり、人や動物から住む場所をうばいつつあります。これまで大きな変化がなかった南極でも、海の氷や棚氷(陸上の氷が海に張り出している部分)が解けはじめ、危機感が増しています。

温暖化を止めるには世界が協力するほかありません。そのため1995年から毎年、削減目標を話し合う「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)」が開かれてきました。2015年のCOP21では「気温上昇を2度より十分低く保ち、1.5度におさえる努力をする」というパリ協定を採択。18年には、1.5度をこえると人も自然も適応できないことが科学的に分かり、「1.5度目標」が世界共通の目標となりました。

COP28首脳級会合で演説する岸田文雄首相=2023年12月1日、アラブ首長国連邦・ドバイ代表撮影

最近のNEWS

化石燃料からの脱却 初めて国際的に約束

23年11月30日から12月13日、COP28がアラブ首長国連邦のドバイで開催されました。1.5度目標を実現するための話し合いがされ、大きな動きが二つありました。

一つは、石油や天然ガスの利用をふくめ、すべての化石燃料からの脱却を初めて国際的に約束したことです。

もう一つは、世界各国の温暖化対策の進み具合を確認する作業を初めてしたことです。このままでは1.5度目標の実現は難しく、2025年までに温室効果ガス排出の増加を止め、30年までに43%、35年までに60%削減するよう(ともに19年比)対策を強化する必要性が合意されました。

(朝日小学生新聞2023年1月26日付)