ひとり親の7割超が、経済的な理由で子どもの服の新調をあきらめた経験あり──。東京のNPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」が実施した「ひとり親家庭の衣服の困りごとに関するアンケート」の結果から、そのような実態が明らかになりました。

子どもの成長や年齢に合った衣服が用意できない家庭が多く、場面に応じた衣服を持ち合わせていないことで外出や周囲との交流を控えるなど、社会生活や人とのコミュニケーションに影響を及ぼしているケースがあることもわかりました。

アンケートは2023年11月~12月、同法人が展開するフードバンク事業の利用者らを対象に実施されました。

アンケート①で「過去1年間に必要な衣服を買えなかった経験」を尋ねたところ、「よくあった」「時々あった」「まれにあった」という回答の合計が、8割近くにのぼりました。自由記述では「服や靴が買えない。全員、靴に穴があいているため雨の日がつらい」といった悲痛な声が寄せられました。

アンケート②では「保護者自身の古くなった服(破れている・形が崩れている・落ちない汚れがあるなど)を着続けることの程度」を質問しました。「かなりある」という回答が38.3%、「まあまあある」も46.0%にのぼりました。

さらに、子どもの服について「経済的に余裕がないことが理由で、古くなった時やサイズが合わなくなった時に新しく購入することをあきらめた経験」を聞きました。「かなりある」が25.3%、「まあまあある」が47.4%で、合わせると7割を超える結果となりました。

回答者からは「まずは食べること、学費、光熱費、家賃。残りがあれば衣服を買うが、ひとり親になってからは私の収入だけなので余裕がなく、ぜいたくできない」「私の普段着は、子どもの過去の中学校の服やジャージ。息子もジャージを着用している。食べることで精一杯で、洋服まで手が回らない」など、経済的な窮状を訴える声が上がりました。家計の中で、衣服に充てる費用の優先順位が低くなっている家庭が少なくないようです。

子どもの成長や年齢に合わせて、衣服を用意することが難しい実情に苦悩する様子もうかがえました。

「息子は中学生になり、私の身長を超えた。カッコよく、はやりの服も着たいだろうに、親を気遣って私の小さいパーカーなどを着て出かける」「少しキツくても着てもらっており、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。下着もたくさん買えないので時々、乾ききらないまま着てもらうこともある」

一方、衣服を十分に持てないことで、心理面やコミュニケーションにおいて不自由さを抱えているケースも明らかになりました。

「『同じ服ばかり着ている。ダサい』と周りから思われているんだろうなと、人と会う時に萎縮する気持ちがある」「子どもの保護者会に着ていくようなおしゃれ着を持ち合わせていないので、できるだけ他の人とは関わらないようにしている」「子どもが友達と遊びに行く約束をしたのに、着ていく服がなくて断ったと聞いた」「子どもが体育の着替えの時に、襟が少しだけ擦り切れた服を着ていて、お友達に『お前の服、ボロボロ〜』と言われベソをかいて帰ってきた。ごめんね、って言いながら抱きしめた」

同法人は「ひとり親家庭が抱える衣服の困りごとは、深刻化する相対的貧困の様相を如実に示している」と分析。友達に「ボロボロの服を着ている」と言われた経験があったり、着ていく服がなくて交流を控えたりすることで、自己肯定感や対人関係を育む機会が不足し、心理面や社会生活に長期的な影響を及ぼすリスクが危惧されると指摘しています。

〈アンケート①の概要〉
調査対象:フードバンク「グッドごはん」に新規登録した「ひとり親家庭等医療費受給者証」の保有者
回答者数:732人
調査方法:オンライン回答フォームへの入力
調査時期:2023年11月1日~12月31日

〈アンケート②の概要〉
調査対象:グッドネーバーズ・ジャパン開催の衣服無料提供イベントに申し込んだ「グッドごはん」利用者
回答者数:768人
調査方法:オンライン回答フォームへの入力
調査時期:2023年11月16日~11月26日