以前、教育相談で

「うちの子の読解力が劣っているわけではない。国語って事務処理能力のことでしょう? そこを教えてもらえれば、成績は上がるから」と言ってこられた方がいました。

事務処理能力……それをどう教えてよいのかわからなかった私は、結局いつも通りの「精読」で、勉強をすすめていたのですが、ある日「これでは成績が上がらない」 と言って去って行きました。以来、国語の力について考えるようになり、また読解力についても説明するようにしています。

読解力とは、まず横長の長方形を想像してもらいます。その中に収まるように、さらに横長の薄い長方形を下に収めます。これが土台となる語彙力です。土台の横長長方形の上に、右下に直角がくる直角三角形を乗せると、これが物事の筋道たてて考える論理力となります。残りの空間が感情、共感、想像力などを有する情緒の三角形となります。

つまり読解力とは、箱の中に土台の語彙力があり、上に二つの三角形(情緒力と論理力)が互い違いに乗り合わさった形といえるでしょう。

発達段階に応じた「国語教育における重点の置き方」のイメージ図

※表現力(表す力)は図の「情緒力・想像力」「論理的思考力」「語彙力」の全てに関連するので、図から外してある。

平成16年2月3日 文化審議会答申『これからの時代に求められる国語について – 文部科学省』より

この三つの力は人によってマチマチで

「語彙力がスカスカなので、情緒力も論理力もあまり役に立たず、文章が読めない子」

「語彙と論理力はあるけれど、情緒力が薄く、物語文の登場人物の気持ちが読み取れにくい子」

など個性があります。これを知ると、国語の成績の特徴がすっきりと見えてきませんか? 「情緒力で物語文を解いてきたのね。」 など……。

さらに、この読解力を構成する長方形の後ろに、“家庭環境”という壁紙が薄く透けて見えるというのが私の持論です。家庭でどんな会話をしているか、どんな本を読んできたのか、といったバックボーンですね。これを知っておくと

「うちは論理力が弱いから説明文が苦手」

といった時も、対策が立てやすくなります。

ちなみに私は語彙と情緒力と知識のバックボーンで解いているタイプです。

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(朝日小学生新聞2024年1月24日付)