※この記事は、2004年10月1日付の朝日小学生新聞に掲載されました。記事の内容は、新聞に掲載したときのものです。

日本の小泉首相とかアメリカのブッシュ大統領とかが、どこかで演説してたのをテレビで見たけど。

国連でしょ。

池田 記者

そう。いろんな国のリーダーが演説をしたの。日本は「常任理事国になりたい」という考えをしめしたのよ。

「常任理事国」って?

ええっと。

池田 記者

そうだね、きょうはみんなで国連のことを考えてみようか。

「拒否権」という 強い権限持つ 5つの国

ひとつの国でも反対なら 重要な決議が成立しない

国連って世界中の国が入っているんでしょ。

――その通りだよ。国連は「国際連合」の略で、1945年にできた。191か国と、世界のほとんどの国が入っているんだ。

何のためにできたの。

――一番大きいのは、世界の平和と安全を守ること。そして、世界のお金や経済、人権など、さまざまな分野でも活動するんだよ。

「常任理事国」っていうのは。

――国連には全部の加盟国が集まって、いろいろなことを話し合う「総会」があるんだけど、平和と安全を守ることに関しては、総会よりも強い機関として、15の国でつくる「安全保障理事会」があるんだ。

それが「安保理」ね。

――総会で決めたことはもちろん重要なんだけど、安保理の決定はもっと強い「拘束力」を持っていて、国連加盟国はしたがわなければならないんだ。

191か国より、15か国の方が力が強いの?

――そういう側面があるんだ。15の安保理のメンバーにも2種類あって、それが常任理事国と非常任理事国。非常任理事国は現在10か国で、2年ごとに総会でえらばれる。日本も九八年までに八度えらばれている。それに対して中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの5つの国は選挙でえらばれなくてもずっと安保理にいられる常任理事国なんだよ。

日本はそれになりたいのか。

――そう。常任理事国にはずっと安保理にいられるだけではなく、「拒否権」という強い権限もあるんだ。これは平和や安全にかかわる重要な問題について、この五つの国のひとつでも反対すれば、決議が成立しなくなるというものなんだ。

「日本もなりたい」 でも実現はかんたんではない

日本は常任理事国になれるのかしら?

――日本は、国連にかかわるお金をアメリカについで2番目に多く負担していることなどから、ここ10年くらいは「なりたい」といいつづけているけど、そうかんたんじゃなさそうなんだ。

どうして?

――日本は安保理の国の数をふやして常任理事国になろうとしているんだけど、安保理を拡大するには、常任理事国の5か国すべてが同意して、全加盟国の3分の2以上がみとめないといけない。

ふーん

――で、まず5つの国全部が「日本もどうぞ入ってください」といってくれるかどうか。その前に、いくつ数をふやすことで合意できるのか、いや拡大そのものにみんな賛成なのかすらわからない。

それに、ほかの185の国の中に「日本が拒否権を持つのはいいことだ」と思っている国がどれくらいあるかも、わからない。そもそも、「拒否権」というものを一部の国だけが持つことに反対している国も多いんだ。

そうなんだ。

――小泉首相は、イラクでの自衛隊の人道支援活動などで実績をつんだ日本は、常任理事国にふさわしい資格があるといっている。国内には、常任理事国入りには武力を使うことを禁じた憲法9条の改正が必要だ、といった議論をする人も一部いる。

いろんな考えの人がいるのね。

――ちょうど来年は国連ができてから60年。日本が常任理事国になるかどうかだけでなく、安保理をどうかえていくか、国連全体をどうするべきなのか、といったことを考えるいい機会じゃないかと思うな。国連はみんなの未来にとっても、とても大事なものなんだからね。

池田 伸壹記者(朝日新聞外報部)

(朝日小学生新聞2004年10月1日付)