※この記事は、2002年6月1日付の朝日小学生新聞に掲載されました。記事の内容は、新聞に掲載したときのものです。

日本に住めなくなったらどの国をえらぶ?

うーん、アメリカかな。

石合 記者

どうしてそんなことを聞くの?

中国にある日本総領事館での事件を勉強したでしょ。あの家族は、あぶない思いをしてまで、自分の国をはなれて別の国にうつろうとしたんだって。

石合 記者

そうなんだ。いま世界では、ニュースになった五人のように、いろんな理由で自分の国からのがれてきた人、つまり難民や亡命者がふえているんだ。

内戦や食糧不足などで 「難民」

なぜ、国をはなれようなんて考えるのかな?

ーー日本にいるとわからないと思うけど、一部の人が権力をにぎって支配している国では、政府のよくないところを話しただけで逮捕されるケースもある。人種や民族のあらそい、戦争、食べ物の不足や自然災害からのがれるため、国をはなれる人もいる。

世界にはいま、約2千2百万人をこす難民がいるといわれている。東京の人口より多いんだ。

こないだの家族も難民なの。

――金正日総書記が権力をにぎる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で、政府の敵とみなされ、つらい目にあわされてきた「亡命者」とみられている。

難民も亡命者も「かくまって守ってもらうことを必要としてにげてきた人」という意味だけど、政府と考えがちがうなどの理由で外国へのがれようとする人は、亡命者とよばれるんだ。

ふーん。

――難民を守るための国際的な取り決め「難民条約」では、どんな人を難民とみなすか、きっちり決められている。政府とちがう意見を持っているせいで、ひどい目にあわされるおそれが十分にある人とか、いろいろ細かい条件がつけられているんだ。

じっさいには戦争でにげてきた人など、条件に合わなくても難民として保護される場合がある。受け入れ国によっても難民とみとめる基準はずいぶんちがう。

日本も受け入れているの。

――日本も難民条約にくわわっている。とくに、1975年にベトナム戦争が終わり、国が社会主義になると、たくさんの難民がボートに乗ってにげてきた。こうした人たちを受け入れて生活をささえ、日本語も教えた。いまも約一万人が日本でくらしている。

むずかしい見わけかた どう受け入れるか問題

国がまずしくて豊かな生活ができないから、よその国にのがれる人もいるって先生に教わったことがあるけど、そういう人たちも難民なのかな。

――そういう人は「経済難民」とよんでいて、難民条約の対象にはなっていないんだ。難民とうそをついて入国しようとする場合もあって、先進国は審査をきびしくしている。「難民だから受け入れてください」とたのんでも、みとめられないケースが多いんだ。

本当に守ってあげる必要がある難民をどう見わけるのか、むずかしそうね。

――難民をたくさん受け入れたヨーロッパの国々では、生活をささえるお金がたくさん必要になり、外国人を敵のように見る人たちも出てきているんだ。

国の制度をととのえるだけでなく、民族や文化のちがう外国の人たちを社会がどう受け入れていくか、みんなで話し合うことが大切なんじゃないかな。

石合 力 記者(朝日新聞政治部)

(朝日小学生新聞2002年6月1日付