いま、日本人の2人に1人が一生のうちでがんになっています。しかし、早期発見と治療法の進歩によって、病気を乗りこえて生きられる人が年々増えています。

早めの発見と適切な治療で、治る人も多い
Q がんはどんな病気?
A 体内でがん細胞が増え続け、体の機能が保てなくなる

がん細胞は多くの場合、悪性のかたまり(悪性腫瘍)をつくります。がん細胞とは何でしょうか?
私たちの体は数十兆個の細胞からできていて、たえず細胞分裂をくり返しています。正常な細胞は役割を終えると死に、新しい細胞と入れかわります。
ところがまれに、細胞分裂のときのコピーミスで遺伝子に傷がつき、死ぬことができずに、ずっと分裂し増え続けてしまう細胞が発生します。これが、がん細胞です。
がん細胞はまるでアメーバのように活発です。まわりの組織にしみこむように広がる「浸潤」を起こします。血管に入り、血液に運ばれて体のあちこちに移動して、新たに根を下ろした場所で悪性腫瘍をつくる「転移」も起こします。
放っておくと腫瘍の数も大きさも増えて体の機能が保てなくなるため、早めの治療が必要です。
最初にがんが発生した臓器によって、大腸がんや肺がんなどと分類されます。日本で新たにがんと診断される人は、年間約100万人。多い順に大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、前立腺がんです。男性では前立腺、女性では乳がんがそれぞれ最も多くなっています。
Q 亡くなる人は多い? 治療法はどう変化?
A 免疫の力を利用する治療法が希望の光に

いま日本人の2人に1人が一生のうちでがんになり、がんで亡くなる人はおよそ4人に1人。年々、がんになる人、がんで亡くなる人の割合は増えていますが、その主な要因は高齢化です。その影響をのぞくと、がんになる割合は横ばい、亡くなる割合は減っています。がんになっても、治療後に完全に治ったり、転移や再発をせずに生活できたりしている人がたくさんいる時代になりました。
がんのリスクを下げるポイントは二つ。「早期発見」と「適切な治療」です。まずは、症状が出るよりずっと前の早い時期に見つければ、完全に治る可能性が高くなります。定期的な検診が大切です。
そして、もしもがんが見つかったら、安全で効果が証明されている治療を受けることが重要です。これを標準治療といい、全国のがん診療連携拠点病院などで受けられます。
標準治療は医学の進歩に応じて年々変化しています。中でも、免疫の力を利用してがんを攻撃する免疫療法の一つ「免疫チェックポイント阻害薬」には効果が証明されたものがあり、標準治療として多くの患者さんの希望の光になっています。
最近のNEWS
AYA世代のがんを知るイベントが全国で開催中
3月2日から10日までは「AYAweek 2024」です。毎年この時期にAYA世代のがんを多くの人に意識してもらうため、全国でイベントが開かれています。
AYA世代とは、15歳から39歳までのこと。「Adolescent and Young Adult(思春期と若い成人)」の頭文字です。この世代でがんの診断を受ける人は1年間で約2万人います。
がんは世代によって発症しやすい種類が異なります。AYA世代ではまれながんが多い上、子どものがんと大人のがんの両方が見られるのが特徴です。進学や結婚、出産など生活が目まぐるしく変化する時期。がんを早く見つけ、心も体もケアできるよう、みんなで知識を深めることが大切です。

(朝日小学生新聞2024年3月9日付)

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