「賃金を上げて」と労働組合が会社に求める運動

Q 春闘って何をするの?

A 賃金引き上げのほか、労働条件をよくすることも求める

■解説者 崔真淑(エコノミスト・「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役)

春闘には「闘う」という文字があり、少し物騒にも思えますよね。春闘とは、毎年2月ごろから春にかけて労働組合が、勤めている会社に対して賃金の引き上げや、働く条件の改善を求めて交渉する運動の呼び名です。労働組合とは、労働者が集まる組織で、その賃金など働く条件を保ったり、改善したりすることを目的としています。

では、なぜ労働組合があるのでしょうか? 歴史をふり返ると、会社の経営者の中には、その会社で働く労働者の利益よりも経営者の利益を優先するため、賃金を不当に低くおさえたり、良くない労働環境で仕事をさせる場合がありました。そこで、労働者たちが自分たちの生活を守るため、一致団結するようになったのです。

労働組合は、不当に賃金を低いままにするならば、労働組合に加入する組合員が一定の期間仕事をしない「ストライキ」をするぞとせまるなどして、賃金を引き上げるよう交渉します。会社もストライキをされてはもうけられなくなるので、労働組合の意見を無視するわけにはいかないのです。

ヨーロッパやアメリカなどの国では、労働組合によるストライキはめずらしくないですが、日本の労働組合はストライキを行うことがめったになく、会社との賃上げの交渉を主な役割としています。

労働組合のない会社もあります。そうした会社では経営者の考えにしたがうしかないかというと、そうではありません。春闘における労働組合の活動の活発さや、会社の賃上げの動きがたくさん報道されるようになると、労働組合のない会社の経営者も無視できなくなるからです。優秀な人材を引きとめたり、会社の評判を保とうと意識したりする中で、賃上げについて考えざるを得なくなります。

Q 今年の注目点は?

A 物価上昇が続いて、賃金引き上げの期待が大きい

■解説者 崔真淑(エコノミスト・「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役)

今年は特に、物価の上昇が続いていることから、社会では賃上げの必要性がさけばれています。さらに、政府が賃上げや労働者の育成に投資をした会社に対して減税するしくみを設けました。

日本の経済を支える自動車産業など製造業の労働組合、小売業やサービス業を中心に組まれた労働組合、日本で増え続けている非正規労働者のための労働組合など、さまざまな立場の労働組合があります。彼らと会社との春闘に注目が集まっています。

今年の春闘は始まったばかりですが、一部の自動車メーカーが労働組合の要求通りに賃上げを行うと約束したり、小売業の会社がパート従業員の時給を7%引き上げることを決めるなど、さっそく成功が伝わってきています。

最近のNEWS

賃上げ予定の会社 6割にのぼるとも

労働組合の中央組織である連合は今年の春闘で、3%以上のベースアップ(基本的な給料を上げること)を目標にかかげています。2024年度に賃上げを行う予定の会社がおよそ6割と、過去最高になったとの調査もあり、賃上げへの期待が高まっています。

ただ、重要なのは物価が上昇する以上に賃上げが続くことです。さらに賃上げを行っても、給料から引かれる社会保険料の値上げが続けば、労働者の手元に残るお金は減りかねません。働く環境に対しては、まだまだ安心はできないかもしれません。

(朝日小学生新聞2024年3月2日付)