
日銀が初の「マイナス金利政策」
銀行の貸し出し増で景気をよく
日本銀行(日銀)が「マイナス金利政策」を始めたって聞いたよ。

福田記者 16日から始めたよ。日本では初めてとなる政策で、景気をよくしようとするねらいがあるんだ。
くわしく教えて。

――まず、「金利」から説明しよう。銀行はみんなからお金を預かると、その代わりにお金の「借り賃」として、「利息」を払ってくれるんだ。預けたお金に対する利息の割合のことを「金利」と呼ぶよ。マイナス金利とは、金利が0%より低いマイナスになるという意味で、お金を預けると利息を銀行に払う必要が出てくるということなんだ。
それは大変! 早く銀行からお金を引き出さないと。

――みんなが銀行に預けたお金の金利はマイナスになっていないから、安心して。みんなが銀行に口座を持つように、実は銀行も日銀に口座を持っていて、日銀は「銀行の銀行」と呼ばれているんだ。日銀のマイナス金利政策というのは、その口座のお金の一部に、マイナス0.1%の金利をつける政策なんだよ。
なあんだ。私たちの預金じゃないんだ。でも、なんでそんなややこしいことをするの?

――国内のものやサービスの値段が上がりにくくなっている状態を改めて、景気がよくなるようにするためだよ。特に年明け以降、株価が大きく下がるなどして、これから景気が悪くなるおそれも出てきた。だから、マイナス金利政策で景気をよくしようとしているんだ。
それで景気はよくなるのかな?

――銀行が日銀に預けるお金につける金利がマイナスだと、銀行は利息を払わないといけないので損しちゃうから、その分、お金を会社などへの貸し出しに回そうとすると期待されているんだ。貸し出すときの金利も、日銀にある口座のマイナス金利につられて低くなるといわれている。借りる側の会社や個人も、金利が低ければお金が借りやすくなり、工場や家を建てたり、ものを買ったりするかもしれない。結果的に景気がよくなると、日銀は見こんでいるんだ。
それはいいね。

――でも、銀行は、自分が日銀に預けているお金に損が出たり、金利が下がってもうけにくくなったりするから、その分を埋め合わせないといけない。すでに、みんなが銀行に預けているお金の金利は一部で以前より減らされているよ。今後、預けているお金の額によって、手数料を取ろうとする銀行が出てくるかもしれない。いいことばかりとはいえないね。
外国でも同じようなことをしているの?

――日本より先にヨーロッパ(欧州)の国々がここ3~4年の間、物価を上げて景気をよくしようとして、マイナス金利政策を本格的に取り入れてきた。デンマークでは、金利をマイナス0.65%まで下げたんだけれど、家を買うお金を借りると利息をくれる銀行まで現れたよ。これは極端な例だけれど、日銀は欧州での経験を研究して、日本版のマイナス金利政策を始めたんだ。
日本でもうまくいくといいね。

――日本の場合、銀行が預けたお金につけるマイナス金利は0.1%と、欧州と比べればまだ幅が小さい。専門家の中には「この程度では景気がよくなる効果は小さい」という人もいるよ。だから、日銀の社長に当たる黒田東彦総裁は必要があれば、マイナス幅を拡大する、というんだ。
そんなにマイナスにして大丈夫かな。

――日本では初めての政策なので、まだよくわからないことが多いんだ。本当に景気がよくなるのか、人々の暮らしで困ることが増えないか、みんなでよく見ていかないといけないね。
解説 福田直之記者 朝日新聞経済部
(朝日小学生新聞2016年2月20日付)

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