
日本で初めて国立公園ができてから、今年で90年。世界的にもほこれる自然の風景として全国に34か所あり、国土面積のおよそ5.8%をしめます。今年の夏には、新たな国立公園の指定が予定されています。(佐藤美咲)
自由研究・探究学習のヒント
キーワード #国立公園 #外国人観光客 #自然保護
・日本で初めて国立公園に指定されたのはどこかな?
・国立公園で働く「自然保護官(レンジャー)」はどんな仕事をしているかな
・住んでいるところに近い国立公園はどこかな。どんな特徴があるか調べてみよう
自然守り、次世代へ
国立公園は、日本を代表するすぐれた自然の景色が残る場所を守り、次の世代に伝えていくためにもうけられました。
日本では、1934年3月16日に香川県や岡山県などを中心とした「瀬戸内海」、長崎県の「雲仙」、宮崎県と鹿児島県にまたがる「霧島」の3か所が初めて指定。さらにこの年に、北海道の「阿寒」や、熊本県の「阿蘇」などの5か所が加わりました(名前はすべて当時)。
指定されると、国が区域を決めて、家を建てたり開発したりするのを制限します。また、風景や自然を楽しむことができるように情報の発信や、歩道や施設の整備などもします。
自然の風景地や動植物たちを守ろうと、国立公園で活躍しているのが「自然保護官」(レンジャー)です。公園内のパトロールから、動植物の調査、開発をしてよいかどうかの審査などもしています。
外国人観光客にもアピール
国立公園は、日本の魅力を伝える観光地としても期待されています。環境省は2016年から、多くの外国人観光客に訪れてもらえるように魅力的な体験プログラムの開発や、施設の再整備などに力を入れてきました。
今年の夏には北海道の日高山脈や襟裳岬と、その周りの地域からなる国立公園が新たに指定される予定です。
国立公園の豆知識
日本で訪れる人が一番多い国立公園は?
富士箱根伊豆国立公園(2021年には約7千万人が利用しました)
いま日本で一番広い国立公園は?
瀬戸内海国立公園(1府10県にまたがり、海域をふくめると90万ヘクタールをこえます)
自然の恵みもおそろしさも実感
江戸川大学国立公園研究所の所長・奥山正樹さんに、国立公園にまつわるあれこれについて聞きました。
人々が暮らす私有地も国立公園に

Q(質問) 国立公園はどうやって決めているの?
A(奥山さんの答え) 自然公園法にもとづき、日本を代表するのにふさわしい自然の風景地に対して、環境大臣が指定しています。指定されると、国が管理します。国立公園ではたらく自然保護官(レンジャー)も環境省の職員です。
名前がにている「国定公園」は国立公園に準ずる自然の風景地で、全国に58か所あります。これも環境大臣が指定しますが、公園がある都道府県が管理しています。
北海道の日高山脈襟裳国定公園は多様な動植物や氷河時代につくられた地形など、貴重な自然が存在することから、今年の夏に国立公園に格上げされます。

Q 日本ならではの魅力は?
A 1872年に世界で初めて国立公園となったイエローストンがあるアメリカでは、国立公園の土地すべてが公園のものです。手つかずの自然が多く残っています。
一方で、アメリカに比べ国土がせまい日本では、国立公園といっても、すべてが国のものではありません。人々が暮らす私有地もふくめ指定しています。
火山活動によって生み出されたカルデラや断崖が残る公園や、三陸復興国立公園のように大地震からの復興のために再編成された場所もあります。自然の恵みもおそろしさも実感し、日々の暮らしの中で育まれた土地の歴史や文化も感じることができるのが魅力でしょう。

外来生物や自然保護に課題も
Q 国立公園の楽しみ方は?
A 富士山をはじめ、実はみなさんがすでに訪れたことがある場所が国立公園の一部、ということがあるかもしれません。「なぜ、この場所が国立公園になったのだろう?」と考えたり、調べてみたりして、国立公園という日本の宝を感じてみてほしいです。
それぞれの公園では、不定期で自然保護官といっしょに自然観察などをするプログラムも開かれています。その公園にすむ動物や、植物との出合いも楽しめるでしょう。
Q 国立公園の課題は?
A 増えすぎたシカや外来生物によって、生態系や森林の景観が大きく変わってしまうことが複数の国立公園で起きています。生態系が変わらないよう、管理をしていかなくてはいけません。また、人間が自然をこわさないように楽しみ、自然の大切さを理解することも大切です。「保護」と「利用」のバランスをうまくとっていくことが求められます。

(朝日小学生新聞2024年4月16日付の記事をもとに再構成)

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