太陽のしくみをまね ばく大なエネルギー作る

Q 核融合ってなに?

A 物質を合体させてエネルギーに。「地上の太陽」の呼び名も

解説者 竹野内崇宏 朝日新聞東京本社 科学みらい部

そもそも「融合」(フュージョン)とは、ものがとけ合い一つになることです。核融合発電とは、物質を形づくる小さなつぶの「原子核」などがくっついて一つになるときに、ばく大なエネルギーが生まれることを生かした発電方法です。

太陽が何十億年もかがやき続けているしくみをモデルにしています。水素などの原子の核はふつう、となり合うだけでは一つになれません。一方で太陽の中心部は温度が1500万度と高く、密度も鉄の20倍までおしこめられています。そこでは物質は「プラズマ」と呼ばれる状態になり、原子核が融合します。

太陽では水素の原子核四つが一つになり、ヘリウムの原子核と「中性子」と呼ばれる粒子ができます。こうした反応で、融合する前より質量(重さ)がわずかに軽くなります。この減った分が大きなエネルギーに変わります。

これは、有名な物理学者アインシュタインが発見した「E=mc2」という公式にもとづきます。。「エネルギー(E)は、物質の質量(m)に光の速さ(c)の2乗をかけたものにあたる」という意味です

核融合発電は「地上に太陽をつくる」技術ともいわれます。発電では、核融合で飛び出す中性子をつかまえたときの熱を使います。理論の上では燃料1グラムで、石油約8トンを燃やすのと同じエネルギーが得られます。

Q 実現しそうなの?

A 国際的に開発競争が過熱。「数年後に開始」かかげる企業も

解説者 竹野内崇宏 朝日新聞東京本社 科学みらい部

技術的な難しさから、核融合が実現するのは「永遠に30年後」とも言われてきました。ただ近年は、世界中で競争が激しくなっています。

期待を一気に高めたのが2022年12月に発表された、アメリカ(米国)の国立研究所の成果でした。強力なレーザー光を一点に集め、超高温・高圧状態をつくる「レーザー方式」で核融合を実現。世界で初めて、投入したエネルギーをこえるエネルギーを得ることに成功しました。

研究の積み重ねがより進むのは、電流や磁力を使ってプラズマをとじこめる方式です。欧米などの30か国以上が参加する国際熱核融合実験炉「ITER」計画に日本も参加しています。

さらに強気な計画を立てているのが、世界各地で新たにできたベンチャー企業です。米国の「ヘリオン・エナジー」社は核融合発電所を28年までに動かし、米国のマイクロソフト社に電力を供給する契約を結んでいます。日本国内でも30年代の早い時期の発電開始をかかげるベンチャー企業が複数あります。

最近のNEWS

政府が国家戦略つくる 安全規制の検討も

核融合は、海水にふくまれる水素のなかま「重水素」を燃料にできる可能性があります。石油など化石燃料を輸入にたよる日本にとって、海水はほぼ無限に手に入るため、実現できれば利点が大きいとされます。日本政府は去年、核融合の国家戦略をつくりました。

核融合の反応は、燃料を入れるのをやめれば止まるなど、原子力発電に使う「核分裂」より安全性にすぐれているとされます。それでも燃料や廃棄物は放射性物質です。政府は5月、核融合実現に向けて安全規制を考える専門家委員会を立ち上げました。放射線の影響、科学技術コミュニケーションなどの専門家などが話し合い、今年度中に基本方針をまとめる考えです。

■解説者 竹野内崇宏 朝日新聞東京本社 科学みらい部

(朝日小学生新聞2024年6月7日付)