この記事は、2013年3月16日付の朝日小学生新聞に掲載されました。記事の内容は、新聞に掲載したときのものです。

国家主席に選ばれた習近平総書記(右)と胡錦濤前主席=14日、北京の人民大会堂で ©朝日新聞社

Q(質問) 中国で大切な会議が開かれているんだって?

A(答え) 全国人民代表大会(全人代)だね。日本でいう国会にあたる会議だよ。高度経済成長を成しとげた胡錦濤時代が終わり、新しい国家主席に習近平さん(59歳)、新首相に李克強さん(57歳)が選ばれた。17日に閉会するんだ。

 どんなことが話し合われているんだろう。

 全人代は毎年3月、約3000人の人民代表(国会議員)が北京に集まって、2週間ほどの間、いろいろな話し合いと決定をするんだ。 

 何を決めるの?

A 今年は、2期10年務めた胡錦濤国家主席と温家宝首相の後任を決める大会となった。
国家主席になったのは習さんで、去年11月の中国共産党大会で、党のトップの総書記と人民解放軍の最高司令官に選ばれているから、これで党、軍、政府の全権を手にしたよ。

 どんな政策をするのかな?

A 習主席と李首相を中心とする習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げているよ。「中華民族は5000年あまりの歴史の中で、人類の進歩に不滅の貢献をした」と習主席はいっている。

たしかに、中国は4大文明発祥の地の一つで、紙や印刷、火薬、羅針盤などを発明した。日本も漢字など多くのものを学んだよ。

でも中国が清という国だった時代に、イギリスとのアヘン戦争(1840~42年)に敗れてからは、中国は外国から「東洋の病人」と軽んじられ、国家の存在も危うい状態になった。

Q 近代化におくれたということ?

A そう。でも習主席は、共産党が人民を率いて闘い、努力したからこそ、いまでは世界の主要国の1つになれた、という。さらに中国は、かつてのような偉大さを取りもどして、「人類のためにさらに大きく貢献できる中国になろう」というのが、「中華民族の偉大な復興」というわけ。党機関紙の人民日報は「この『中国の夢』をみんなで実現しよう」と呼びかけた。

Q たしかに中国は最近のびているのよね。

A 中国の自信は、ここ30数年で急速な発展をとげた実績から来ている。中国経済は、経済力を示す国内総生産(GDP)が2010年に日本を抜いて、アメリカに次ぐ経済大国になった。

宇宙開発では、アメリカとロシアの独占を破り、03年に有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げに成功した。月の探査や宇宙ステーションの建設計画も進んでいるんだ。

すごいね。でも問題も聞こえてくるよ。

たとえば貧富の格差だね。党や政府の幹部の汚職は目にあまり、抗議行動が各地で毎日、数百件も起きている。

環境問題も深刻だ。「PM2.5」による大気汚染や黄砂は日本にも及んでいる。

Q 「偉大さ」は取りもどせるのかしら?

すぐというわけにはいかないね。習主席も今世紀半ば以降と考えているようだよ。でも「中国の夢」を目指す動きは、すでに日本と中国の関係に影響しているんだ。

Q どういうこと?

日本と中国の間ではいま、尖閣諸島(中国では釣魚島と呼ぶ)の領有権をめぐり緊張が高まっているね。

全人代は、尖閣諸島などの監視にあたる国家海洋局を強化した。国家海洋局の責任者は「中国が世界の強国になるには、海洋強国にならなければならない」といっている。これも「中国の夢」を実現させる一つなんだ。

心配だなあ。

習主席は逆に「国際社会は中国の発展を正しく認識するよう」求めている。これからますます、私たちの隣国・中国の動きに目がはなせないよ。

■解説者 清水勝彦 元朝日新聞上海支局長

(朝日小学生新聞2013年3月16日付)